各地区との懇談すすむ
協会は、2009年度の地区医師会との懇談を進めている。本年度のテーマは「これからの医療制度について」。本号では3地区との懇談のもようを掲載する。
宇治久世医師会と懇談 1月13日 うじ安心館
後期高齢者医療の次の制度で議論
27人が出席して開かれた宇治久世医師会との懇談会
協会は1月13日、宇治久世医師会との懇談会を開催。地区から22人、協会から5人が出席し、大槻雄三理事の司会で進められた。
冒頭、大石嘉啓会長は政局について触れ、「新政権になって初の診療報酬改定だが、実際のところ開業医にとっては厳しい状況だと感じている」と述べ、協会に情報提供をお願いしたいと挨拶された。関理事長の挨拶、協会からの情報提供の後、意見交換を行った。
意見交換ではまず、後期高齢者医療制度が話題となり、「民主党は後期高齢者医療制度廃止のプロセスをどのように描いているか」との質問が出された。これに対して協会より、「高齢者医療制度改革会議」では、(1)後期高齢者医療制度は廃止する、(2)マニフェストで掲げている「地域保険としての一元的運用」の第一段階として、高齢者のための新たな制度を構築する、(3)後期高齢者医療制度の年齢で区分するという問題を解消する制度とする、(4)市町村国保などの負担増に十分配慮する、(5)高齢者の保険料が急に増加したり、不公平なものにならないようにする、(6)市町村国保の広域化につながる見直しを行う、の基本的考えのもとに進めていくとしているが、高齢者の負担は今後も重くなることが予想され、保険料や一部負担が払えないといった問題も起こり得るだろう、と述べた。
また、社会保障制度のあり方についても話題となり、地区より「協会は、高福祉を目指すために、低負担で頑張ってやっていくスタンスか。財源について将来的に消費税増税もありうるが、どう考えるか」との問いに、協会より「低負担で高福祉が一番良いが、なかなかそうはいかない。医療について言うなら、財源は税や保険料と窓口負担であり、できるだけ窓口負担は少なく、税や保険料は所得に応じて負担するというところで考えている。消費税については財政逼迫だから即消費税増税ということでなく、企業の税負担などを再考することも必要だ」と述べた。
さらに、社会保険診療報酬に対する事業税非課税措置や措置法26条の存続の要望や、診療報酬改定では「正しい評価で改定を行って、点数が下がらないようにしてほしい」との要望が出された。また、新医師会館入居問題に関して「私たち京都市外の会員にとって、協会の事務所が京都府医師会館内にあることに利便性がある」との意見が出された。
右京医師会と懇談 1月27日 右京医師会館
京都府「提案」について議論
13人が出席して開かれた右京医師会との懇談会
協会は1月27日、右京医師会との懇談会を右京医師会館で開催。地区から8人、協会から5人が参加し、斉藤憲治理事の司会で進められた。
冒頭、村上堯会長は、「協会からの情勢報告やレセプトオンライン請求義務化問題などの情報提供を楽しみにしている」と挨拶した。
関理事長挨拶、協会からの情報提供の後に行われた意見交換では、京都府「提案」について、地区から、疾病構造などの現状を把握する名目で行われたレセプト分析で、第一病名のみをサンプリングしていることについて、第一病名が主病名とは限らないことを指摘、「分析結果は極めて信憑性が低い。いかに現場を知らないかを露呈している」との意見があった。また、診療報酬1点単価に差をつける目論見については、「貧富の差が広がる可能性がある。いつでもどこでも誰でもが、同じ負担で同じ高い質の医療を受けられる国民皆保険制度を守り続けてほしい」との意見があった。
これに対し協会は、「高齢者医療制度改革会議の中で、京都府提案は参考にすべきであるとの評価を受けている。しかし、この案には多くの問題を孕んでおり、指摘していかなくてはならない」と述べるとともに、協会の京都府への政策提言について説明し、理解を求めた。
また、レセプトオンライン義務化撤回訴訟の今後について質問があり、協会から、(1)省令での診療報酬請求権の制限は憲法第41条違反(2)オンライン請求義務化は営業の自由を定めた憲法第21条違反(3)オンライン化は、情報漏えいの危険を孕んでいる―などの観点から訴訟を行ってきたことを説明した上で、「09年11月25日の請求省令改定で(2)は解決された。(1)や(3)に関してはまだ課題も残るものの、医師の仲間がオンライン請求義務化を理由に廃院せざるをえないという最悪の状況は回避された」との認識を示し、訴訟は収束の方向であることを報告した。
さらに第5次医療法の改正により、病院だけでなく無床診療所も医療安全指針の作成や従業員研修が義務付けられたことを受け、地区から、「研修を実施しているか調査されることはあるのか、また協会主催の医療安全シンポジウムはその研修に該当するのか」との質問が出された。これに対し協会から、「指針を作成していない、もしくは研修を実施していないことによるペナルティーはないが、事故が起こった場合などは確認されることもある。無床診療所においては、院外研修での代用も認められており、協会主催の医療安全シンポジウムはそれに該当し、参加証も発行する」とアピールし、参加を呼びかけた。
綴喜医師会と懇談 1月30日 新田辺駅前CIKビル
医師不足地域の対策で意見交換
15人が出席して開かれた綴喜医師会との懇談会
協会は1月30日、綴喜医師会との懇談会を開催した。地区から10人、協会から5人が出席し、茨木和博副会長の司会で進められた。
冒頭、澤井公和会長は、「診療報酬改定は久々に本体部分プラス改定と言われている。しかしながら、厚生労働省や中医協などに潜む内情は不透明な部分も多く、今後の議論展開が注目される。問題山積の医療界であるが、本日は協会の考え方も伺いながら、忌憚ない意見交換を行っていきたい」と挨拶された。その後、関理事長の挨拶、協会からの情報提供の後、意見交換を行った。
まず地区から、地区全体の医療提供体制の現状について説明があり、井手町や宇治田原町など、圏内における医師の不足する地域の窮状が述べられた。また夜間や時間外の対応について、「開業医が診療所と自宅を一緒にし、いつでも対応できる態勢をとることで、井手町や宇治田原町の医療資源不足も少しは解消するのではないか」という意見が出された。その一方で、「理念は理解できるが、現実は厳しい。開業医として自分の患者に責任を持つことは当然であり、その上で開業医一人ひとりの事情にあったスタイルで問題はないと考える」との意見も出された。これに対し協会から、「いずれにしても重要なのは病診連携である。井手町や宇治田原町などの問題についてもさらに詳しく調査し、京都府への政策提言の参考にしていきたい」と述べた。
またワクチン問題に関して、綴喜地区では、ヒブワクチン、肺炎球菌ワクチン、ヒトパピローマウイルスについて公費負担を要望しており、協会に対して、運動の強化を求める声があった。これに対し協会から、「ヒブワクチンは3万円近い自己負担になるほか、日本脳炎も1期・2期を受けていない人は自己負担になるという。京都協会からも『わが国の予防接種行政の早急な改善を求める要望書(案)』を保団連に提案した。2月18日に厚労省交渉を行う」と述べ、その中で綴喜地区の意見や要望を厚生労働省に伝えることを約束した。