受診時定額負担、吉川氏が賛意/社保審、日医あらためて反対
社会保障制度改革の草案作りに携わってきた東京大大学院経済学研究科長の吉川洋教授は8月29日、厚生労働省の社会保障審議会(会長=大森彌・東京大名誉教授)の全体会合で「受診時定額負担」に賛成の意向を示した。医療財源が限られていることや、日本は医療費全体に占める自己負担割合が先進国の中でも低いことなどを理由に挙げた。これに対して日本医師会の横倉義武副会長は、社会保障・税一体改革成案に対する日医の見解を資料で提出した上で「患者負担増につながる」として、あらためて受診時定額負担に反対した。
一体改革に関するフリーディスカッションの中で吉川委員は、米国やドイツなどでは国民がプライベートで加入する医療保険制度があることを説明。私的な医療保険まで自己負担として捉えた場合、日本は医療費全体に占める自己負担の割合が15−16%にすぎず、先進国の中で最も低い水準になると指摘した。さらに受診時定額負担について「患者負担を増やす冷たい改革のように言われているが、よく議論してほしい。財源は限られている。今後の議論では、社会保障のどこを集中的に維持するかといった視点が欠かせない」と述べた。その上で自動車保険を例に挙げ「大きなリスクは皆で支え、小さなリスクは各自で負担してもよいのではないかというのが基本的な考え方だ」と指摘した。
この主張に対して横倉委員は、日本の自己負担は低くないと反論。自動車保険の事例についても「社会保障のセーフティーネットの話に自動車保険を持ち込むのはどうか」と牽制した。横倉委員は受診時定額負担など患者負担を増やす施策については慎重論を展開したが、政府の一体改革については「全体的に高く評価している」と述べた。
社会保障の重点化・効率化の在り方についても意見が交わされた。吉川委員が「ポイントは全体の予算枠があること。サービスを給付すれば、誰かが負担しなければならないのは当然だ」と述べると、米澤康博委員(早稲田大大学院ファイナンス研究科教授)は「予算が問題になるならば、市場が必要だ。保険や年金などで規制を緩めてもらい、選択肢を広げるべき。それをせずに給付カットというのには問題がある」と指摘した。(8/30MEDIFAXより)