参議院議員選挙にあたっての保険医の重点要望事項  PDF

参議院議員選挙にあたっての保険医の重点要望事項

 協会は7月10日に行われる参議院議員選挙にあたって、保険医からの重点要望事項を取りまとめ候補者に要望した。京都選挙区(改選2)での立候補者は次のとおり。福山哲郎氏(民進・現)、大八木光子氏(諸派・新)、二之湯智氏(自民・現)、大河原寿貴氏(共産・新)。(届出順)

 参議院選挙を前に安倍首相は公約を翻して消費税増税の再延期を表明した。このことはすでにアベノミクスの限界を露呈しており、社会保障・税一体改革そのものに立ち返って根本的に考えなおす必要がある。

 国は一体改革以来、社会保障制度改革推進法に基づき様々な制度改悪を重ねてきた。2016年度から3年間は年5000億円の社会保障費抑制策を打ち出し、診療報酬改定は実にマイナス1・43%とされた。さらに、かかりつけ医以外を受診した場合の定額負担導入、入院時居住費の患者負担化、高額療養費制度の限度額引上げ、後期高齢者の窓口負担2割化などの給付削減や患者負担増が計画されている。

 提供体制改革においては、レセプトデータ等で推計した「過剰」病床を削減し、患者を早期退院させて在宅に返すことで、入院医療費を抑制させようと、地域医療構想の策定が進められている。在宅に返された患者の受け皿となる地域包括ケアシステムの構築は進んでおらず、地域の実情よりも医療費削減ありきでは混乱を深めるだけであろう。また、2017年4月開始に向けて進められてきた「新専門医制度」の混乱に乗じて、医師偏在解消を理由にこれまで皆保険体制を支えてきた自由開業制の制限を検討するなど医師統制ともとれる動きもおこってきている。

 大企業が過去最高水準の収益をあげて366兆円もの内部留保を抱え、タックスヘイブンでの多額の「税逃れ」が明らかになる一方で、格差と貧困が進み、医療を受けることすら困難な人々がいる。もはや、アベノミクスによる経済の活性化に期待を寄せる声はなく、規制緩和と市場化による医療・社会保障崩壊に対して、患者・医療者はともに将来を展望できなくなっている。

 私たちが求めるのは、誰もが安心して必要な医療を公的に保障する体制の充実と、社会保障の充実を通じて格差と貧困を克服する国民の暮らしに根ざした政治である。それとともに、生命と健康の最大の敵、戦争へと向かう可能性のある施策を止めることである。今参院選に向けて別記10項目を重点要望するものである。

 1、社会保障費の自然増抑制策を止め、国の責任で必要な財源を手当てすること

 2、今後の社会保障財源は、個人消費の減退に結びつかない程度の低率消費税(5%以下への引き下げ)と、巨額金融資産に対する課税強化、所得税の累進性強化、企業の内部留保蓄積に対する規制強化に合わせた法人税引き上げなど、所得税と法人税に対する見直しにより確保すべきこと

 3、受診抑制をさらに悪化させる患者負担増計画を中止すること

 4、子どもの医療費窓口負担を国の制度として無料化すること。当面は自治体の助成制度を妨げるような一切のペナルティを止めること

 5、医療を経済成長の道具にすることをやめ、必要な医療の現物給付や非営利性原則を堅持すること

 6、医療の公共性と安全性を崩壊させるTPPの批准を行わず撤退すること

 7、医師の「地域偏在・診療科偏在の是正」を名目に、「保険医定数制」導入や「自由開業制」見直しなど医師の管理統制を行わないこと。むしろ全国どこでも医業を営み得る地域への再生を目指すこと

 8、地域医療構想における推計値による機械的な病床削減や、外来医療費の無理な地域差縮小政策を止め、地域の真の医療・介護ニーズに即して提供体制を整備すること

 9、原発再稼働・原発輸出を止め、原発依存のエネルギー政策の転換計画を立案すること

 10、日本国憲法を守り安全保障関連法を廃止すること

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