原発で医師会機能が分散/福島県医・高谷会長、避難先に医療を
福島県医師会の高谷雄三会長は3月31日、取材に対し、東京電力福島第一原子力発電所の事故の影響について「20? 圏内は立ち入り禁止で、医師会は全滅に近い状況だ。医師会機能が分散してしまった」と窮状を訴えた。避難指示のため、県内各地に役場機能ごと大規模に避難している例もあるため、今後は避難先での医療提供体制が重要になるとの考えを示した。
原発事故による避難の対象となった地域では、双葉町が町民約1300人とともに埼玉県加須市に避難するなど大規模な避難が続いている。県内でも、会津地方では会津美里町に楢葉町が役場機能を移転し、大熊町も会津若松市に移転を決めている。高谷会長は「各地区の医師会にお願いし、避難所に交代で行く体制を考えたい」とし、医療だけでなく「生活、就職、教育、農業などへの支援が必要だ」と述べ、生活基盤の安定も重要と強調した。
避難所の巡回診療では、一部地区で、医師会員が協力して巡回診療を始めたところもある。一方「地区の先生が動けないこともある。今後も切れ目のないJMAT(日本医師会災害医療チーム)のスケジュールを考えてほしい」と継続的な支援を求めた。すでに活動しているJMATは「リーダーが残していった報告書は非常によくできている」とし、避難所ごとの医療の課題が浮き彫りになりつつあると評価した。JMATトリアージカードの運用も効果的だとした。
県内の被害状況については、地震と津波の被害を受けた沿岸部北部の相馬地方や沿岸部南部のいわき市以外に、県中心部の中通り地方にも被害を受けた医療機関が多いとし、「正常に復旧するにはまだまだ時間がかかる」と述べた。
原発事故については「震災後の人災だ。終わりが見えない」と述べ、県民に不安が広がっていると憂慮した。政府や東京電力の情報提供に対しても「不正確な情報がスピーディーに流され、困っている」と指摘。「ノー・モア・フクシマと言いたい。原発事故で危機を迎えたのは福島が初めてだ」と語気を強めた。
保健所を中心とした県や市町村との連携体制強化も課題に挙げた。また、福島県医は以前から血液センターの検査・製剤業務の集約化に反対してきたとし「今回の大震災で懸念が事実になった。今後も反対していく」と述べた。(4/1MEDIFAXより)