原子力大綱の改定先送り/トラブル続き 政策停滞  PDF

原子力大綱の改定先送り/トラブル続き 政策停滞

 国の原子力委員会(近藤駿介委員長)が、原子力利用の基本方針を示すためにほぼ5年ごとに改定してきた「原子力政策大綱」の2010年の改定を先送りすることが7月2日、分かった。

 地震による原発の被災や、核燃料サイクルの中核施設である日本原燃の核燃料再処理工場(青森県六ケ所村)にトラブルが続いたことなどで政策の先行きが不透明となったことが理由。原子力委は「(10年に改定しても)現行の大綱と同じような内容になりかねない」としており、この間の原子力政策の停滞が浮き彫りになった形だ。

 10年の改定に向けた有識者による委員会設置は当面見送り、次回改定作業の開始時期は未定。

 現行の原子力政策大綱は、1956年から約5年ごとに改定されていた原子力研究開発利用長期計画(長計)を引き継ぎ、05年に原子力委が策定。使用済み核燃料を全量再処理し、抽出したプルトニウムを燃料に再利用する核燃料サイクル路線を堅持する一方、使用済み燃料を再処理せず直接処分する技術も検討することを初めて明記した。

 しかし、肝心のプルトニウムを抽出する再処理工場は、試運転段階でトラブルが続発して本格操業入りを度々延期。プルトニウムを一般の原発で燃やすプルサーマル計画も始まらず、電力業界が当初の目標を5年先送りしたばかりだ。

 06年に改定された耐震指針に基づき国が進める原子力施設の安全性検証作業も、07年の新潟県中越沖地震で柏崎刈羽原発が被災した結果、新しい知見を反映する必要に迫られて長期化。95年のナトリウム漏れ事故以来停止中の高速増殖炉原型炉もんじゅ(福井県敦賀市)も、トラブルや耐震補強工事の影響で運転再開が遅れている。【共同】

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