厚労省懇談にあたり中小病院に意見聴取  PDF

厚労省懇談にあたり中小病院に意見聴取

73%が「新専門医制度」に問題あり

 協会は厚労省との懇談を行うにあたり、「新専門医制度」と地域医療構想について中小病院を対象に緊急アンケートを実施。期間内に11病院から回答を得た。

 「新専門医制度」の評価について、「問題あり」と答えたのは8病院(73%)、「問題なし」は2病院、「わからない」が1病院であった。

 問題と感じるところや負の影響については、「医療崩壊につながる」「中小病院の医師確保が難しくなる」「大学の利権だけを考えた制度」など。その解決法や国への要望については「専門医制度は必要ない」「研修医制度を含め根本的に見直す必要あり」「規模とは関係なく質の高い研修施設を認定すべき」といった意見が見られた(下表)。

地域医療構想に問題ありは45%

 「地域医療構想」について、「問題あり」は5病院(45%)、「問題なし」は2病院、「わからない」は3病院、無回答1病院であった。

 問題と感じるところや負の影響については、「在院日数の抑制が全く合理的であればよいがそうは思わない」「患者追い出し強化」「在宅、施設での収容に限界があり、抜本的な改革が必要」「病院単位で検討すべき問題をとやかくいわれるのは好まない」など。その解決法や国への要望については「在院日数の幅をもっと大きくする」「在宅強化(Dr、Np、介護職員の処遇改善)」「療養型病床、施設の充実をさらに図り、すぐに入れるような拡充をしてほしい」「地域性を充分考慮してほしい」などであった。

 京都府への要望では、「地域包括支援センターの実質的な活動強化」「機能役割を明確にしていくはずが、地域包括ケア病棟を導入することで、大病院から地域への連携パスがなくなってきた。これでは機能役割になっているのか甚だ疑問である」「二次医療圏における急性期の内容充実が最も大切で数を減らすことばかりが課題になっている」「医療圏単位での検討で充分かどうかが疑問あり」など。

新専門医制度に「問題あり」とした病院の意見

問題と感じるところと負の影響 その解決法又は国への要望

医療崩壊につながる 専門医制度は必要ない

専門に偏りすぎると、一般的によい意味での広くみることができる医師がいなくなる 両者がうまく共存できる場をつくるべし

地域の医師不足(医師の偏在)、大学の医局支配 基幹施設の責任で医師不足地域へ指導医をつけた医師配置

医師確保が難しくなる。このままの制度ではまた医療崩壊が起こる 新内科の専門医制度を立ち上げてそれに問題があれば改善していき、他科の専門医に広げていくのはどうか?

大学は研究の場であり、臨床的専門医制度とは必ずしもあわない。当院としてはプラスになる ピラミッド型は必ずしも若年医師教育にプラスにならず、また中小病院との交流が自由にできるようにしてほしい

医師の安定確保が保たれるのか。中小病院にとって医師の不足、派遣医師の引き上げは経営面において大きな影響となる 医師の人事権がどうなるのか、公平な配置が行われるような制度をお願いしたい

現在の研修医制度と同様、仕事をしない、できない医師を増やす。そのため労働力としての医師数が減少、高度医療に対する負担がくる 研修医制度を含め根本的に考え直す必要あり。役に立たない専門医を増やしても意味がないと思う(専門医になることしか考えない医師が多くなる)

新専門医制度は大学病院(あるいは一部の大病院)以外で後期研修をするならば専門医資格を与えないと脅す方法であり、若手医師の力で成り立ってきた市中の中小病院を潰すための方策としか思えない▼内科専門医にしても、内科全般の診療にあたる医師の育成を目標として作る制度ならば内科全般の診療にあたる医師の育成に、全くといってよいほど今迄貢献して来なかった大学に後期研修医を集めることがおかしい▼大学がそのような役割を本当に担いたいのであれば、市中病院よりも様々な疾患を管理することができるような医師育成ができるとの実績を先に示すべきである▼また、どのような後期研修が最も勉強になるかは研修を受ける当人がもっともよく分かっており、自由に後期研修先が選べるようになった近年、大学病院から若手医師が遠ざかった理由を考えるべきである(マッチング結果が市中病院のほうが高いことがすべてを物語っている)▼大学でしか学べぬ先進的医療や研究を若いうちから学ぶべき人は大学病院を選ぶだろうが、総合診療・地域医療に興味があれば大学から遠ざかるのは理解に容易い▼それは、地城医療をローテーションで数カ月研修したところで、患者さんの家庭にまで入り込んだ介入はできず、形式上研修したに過ぎないことを知っているからである▼また、様々な科を短期間でローテーションして、ポリクリのように様々な疾患を形式上だけ診させてもらっても専門医制度の基準はクリアする(それはたとえ治療方針がすでに決まっている患者の定期入院を担当しただけであってもである)。しかし、一例ずつ症例を大事にし、真摯に向き合い、入院から退院まで責任をもって診療すれば、診ることのできる疾患数は少なくなり、専門医制度の基準はクリアできないかも知れない。しかし患者さんの全身を診ることができる医師はどちらと考えられるかは想像に容易い▼人間中心の医療・ケア、包括的統合アプローチ、地域志向アプローチは大学中心のローテーションでは築くことは困難なのである▼このように全人的医療を行おうとする総合診療や地域医療の立場から考えれば、大学病院に後期研修医をかき集めることに利点は見いだせない▼内科専門医の経験すべき疾患リストをみても大学病院を中心とした疾患想定がされており、日本全体の疫学が反映されていない▼ばらばらの臓器別専門医が意見を述べたものを寄せ集めた基準ということが容易に推定できる薄い内容であることは様々な疾患を診療している“本当の内科医”であればすぐにわかるだろう▼このような大学の利権だけを考えて作られた制度で、研修医のそして地域住人にとって望ましくない制度は容認できません。

大病院で研修することが優れる、という間違った認識をまずは取り払い、過去に質の高い臨床研修を行った病院を病院の規模とは関係なく単独の研修施設として認定すべきである▼小さな病院でしかできない研修スタイルもあり、それは大病院の研修スタイルとは大きく異なっても、劣ることはない可能性がある▼大規模施設ではなく、発言力の弱い小さな施設からの意見も事前にヒアリング・調査するという当たり前のことをしてから制度を作り直してほしい。

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