厚労省、09年度ADR普及を本格化/協議会設置や院内相談員育成へ

厚労省、09年度ADR普及を本格化/
協議会設置や院内相談員育成へ

 厚生労働省は2009年度、医療紛争の裁判外解決(ADR) 普及促進に向けた取り組みを本格化させる。医療界、法曹界、民間のADR機関などが参画する「医療ADR活用推進協議会」を立ち上げて医療ADRに関する情報交換を図るほか、事故発生時などの医療提供者と患者の対話促進を図る「院内相談員」の育成も開始する。

 最高裁などによると、医療をめぐる新規の訴訟件数は2000年ごろから急増し、近年は年間1000件前後で推移している。医療に関する民事訴訟の費用負担の軽減や紛争解決までの期間短縮化、患者側と医療提供者側の納得の上での紛争解決などは課題となっており、有効な解決策の1つとして医療ADRへの注目が集まっている。

 近年は東京の弁護士会3団体により、医療に精通した弁護士が第三者的立場で医療事故当事者の意見を聞き説明することで紛争解決を図る取り組みを始めるなど、民間レベルでADR機関の普及促進に努めている。ただ、専門性の高い医療分野のADRには人材やスキルの不足などの課題がある。

 こうした課題を踏まえ、厚労省が新たに立ち上げる協議会では、各機関のさまざまな取り組みの現状や課題について意見を交わし、国レベルでの普及促進策を練る。年6回程度の開催を想定している。

 また、「院内相談員」の育成に関しては、民間団体に委託して全国各地で研修会を開催。医療事故の際の手術経過をはじめとする診療全般にかかわる情報を、医療提供者と患者の間で共有化させる人材の育成を目指す。

 協議会の設置や相談員の育成については、診療関連死の原因究明制度創設に向けて厚労省が示した第3次試案にも「予算措置で対応する分野」として盛り込まれている。第3試案やその後に公表された「医療安全調査委員会設置法案(仮称) 大綱案」については、捜査機関への通知事例や調査委への届け出をめぐる見解の相違から、医療界の中でも方向性が定まっていない状況だが、厚労省は医療ADRの普及に大きな異論はないと判断。09年度の新規事業として取り組むことにした。

 09年度予算概算要求で、協議会の立ち上げ費用として約600万円などを要求している。(10/9MEDIFAXより)

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