医療研究フォーラムへぜひご参加下さい  PDF

医療研究フォーラムへぜひご参加下さい

「保険で良い医療」を実現する医療実践について考える—「開業医医療の復権」をめざして—

 日本の医療制度が、名実ともに「皆保険制度」でありえたのは、それを支えるにふさわしい保険制度と提供体制が存在していたからだ。いま国は、その二つの仕組みを、構造改革の一環として変えていこうとしている。

 医師制度や医師養成制度の改変は、国から見れば提供体制改革の一環であり、提供体制を「皆保険の担い手」という側面から変えるものだ。今熱い議論の渦中にある「専門医制度」は、これに大きくかかわりを持つ。

 第31回保団連医療研究フォーラムでは、これからの「専門医制度」のあり方や国が考えている医師制度改変とそれに伴う医療提供体制について情報を共有し、今後も効率的で質の良い医療提供を保障するのであれば、これまで現場で皆保険体制を支えてきた私たち開業保険医の役割重視と正当な評価が必要との視点で問題提起したいと考えている。

 初日となる10月9日には、「どうなる?日本の医療の姿」と題したシンポジウムを開催。2日目の10日は、午前に日常診療の実践報告を持ち寄る分科会、午後には各分科会での報告と討論を踏まえたティーチ・イン「皆保険体制の持続可能性と開業医医療」を開催する。本紙2970号に案内チラシを同封し、会員諸氏に参加を呼びかけているが、あらためて皆様のご参加をお願いしたい。参加費は医師8000円、コメディカル500円。会場は京都国際会館。お申し込みは協会事務局まで。

「どうなる?日本の医療の姿」シンポジウムの開催

 「新専門医制度」は、2017年度開始を目標にこれまで制度構築の議論が進められてきた。しかしながら、専攻医の給与労働条件・身分保障、既存医師と新制度の関わり、基幹病院となる大学病院・大病院、都市部への医師集中など、医師と地域医療への影響という点での懸念が払拭できず、日本医師会をはじめとした医療団体から原点に立ち戻って検討をすべしとの要望が出されるに至った。現時点では、2017年度からの全面実施は潰えたといってよい状況である。

 しかし、一方新たな問題として、専門科偏在、地域偏在への対応策としての医師の適正配置と数の管理という問題が提起され始めている。保険医定数制、自由開業の規制、総合診療医の地域への配置などがそれである。こういった問題に焦点をあてようと今回のシンポジウムでは、「どうなる?日本の医療の姿—これからの医療提供体制、新専門医制度がつくる医師制度」と題して各専門家をお招きした。(左上表)

翌日は分科会と討論集会へ

 翌日の10日(月・祝)は午前に日常診療の実践報告を10分科会とポスターセッションに分かれて発表。午後からは、各分科会の報告と討論を持ち寄り、ティーチ・インを行う予定だ。

 ティーチ・インは、「皆保険体制の持続可能性と開業医医療—皆保険成功の秘訣は『開業医的医療』にあり」をテーマとしている。日本の医師、歯科医師は皆保険成立以来、その担い手(保険医)として、「保険で良い医療」と「保険で良い医業経営」の一体的な実現を求めてきた。

 一方で、患者の生活と健康の守り手としての保険医は、無用な負担を避ける医療にも心を配ってきた。その結果、効率的で質の良い今の日本の医療を形づくることができたといえる。

 各分科会で報告された各地の保険医の実践報告を参考に、これからの日本の医療に必要な保険医の在り方について、議論を行っていきたい。 

 
●シンポジウム 10/9 15:30〜18:00
どうなる?日本の医療の姿
—これからの医療提供体制、新専門 医制度がつくる医師制度
 
●パネラー
羽鳥 裕氏 公益社団法人日本医師会常任理事、社保審医療部会「専門医養成の在り方に関する専門委員会」委員、日本専門医機構理事
草場鉄周氏 日本プライマリ・ケア連合学会副理事長、専門医制度推進委員会委員長
伯野春彦氏 厚労省医政局地域医療計画課医師確保等地域医療対策室長(在宅医療推進室長併任)
三浦清春氏 全国保険医団体連合会政策担当副会長
●司会・コーディネーター
近藤克則氏 千葉大学教授
 
 
●分 科 会 全国からの応募演題数160  10/10 9:00〜12:30
 
京都からの発表一覧
 
(1)認知症分科会
  杉本 英造氏 「認知症治療:訪問診療と多職種連携の必要性」
  木村  進氏 「一人暮らしの認知症のリスク」
  関   透氏 「下京区・南区認知症ケア地域連携協議会の10年」
  松田かがみ氏 「宇治久世医師会における認知症の取り組み」
(2)癌を含めた終末期分科会
  上田 通章氏 「『在宅死』における医者とコメディカルとのジレンマ」
  山下  琢氏 「ICTと転送電話を利用した土日限定看取り当番医制度」
  西原  寛氏 「私の看取りについて」
(3)難病(障害、リハビリを含む)分科会
  藤田 祝子氏 「地区医師会で取り組む『難病相談室』」
(4)高齢者分科会(A・B)
  須川 典亮氏 「高齢化過疎地域での在宅医療の限界と対策」
  礒部 博子氏 「皮脂欠乏性湿疹治療への開業的アプローチ」
  柳澤  衛氏 「臨床現場からの提言『京都府郡部で開業する医師の報告』」
(5)子どもの医療と健康問題分科会
  長谷川 功氏 「当院における小児在宅医療への取り組み〜寄り添いと連携の視点を持って〜」
  幸道 直樹氏 「小児が発端者であるインフルエンザの家族内感染調査」
  森  啓之氏 「夜尿症児における日常生活指導の効果」
  家森百合子氏 「発達障害児の早期発見早期治療の重要性と小児科の保険診療でできる限界」
  山内 英子氏 「病児保育の現状と今後の展望」
  尾崎  望氏 「格差と貧困の広がりの中で小児科医療機関の果たす役割」
(6)メンタルヘルス分科会
  才村 泰夫氏 「認知症患者を抱える家族のメンタルヘルスケアについて」
  礒野  理氏 「ためこみ症(Hoardingdisorder):当院で関わった症例の特徴と経過について」
  丸井 規博氏 「地域精神医療における垂直統合型診療所のあり方」
(7)「生活習慣病」分科会
  辻  俊明氏 「スマートフォンおよびコンピューターディスプレイの眼および身体に及ぼす影響」
  倉田  正氏 「〜肛門健康音頭でルンルンルン〜」
(8)貧困・労働・生活・環境問題がベースにある医療と健康の問題分科会
  河本 一成氏 「福島第一原発事故による避難者こども検診の取り組みについて」
  山本 昭郎氏 「京都府内の大気汚染調査第12報—会員協力のもとでNO2カプセル測定—」
  三浦 次郎氏 「無料低額診療を広げてほしい〜無低を適用して安心して癌緩和治療を続けられた症例を通じて〜」
(9)口腔の健康問題分科会
(10)医療技術、医学・医療運動史、医療制度問題・医療運動分科会(A・B)
  門  祐輔氏 「地方都市における民間小病院の役割—京都府北部での経験—」
  礒野  理氏 「旧日本軍遺棄毒ガス被害者実態調査と日中共同医療支援」
  関   浩氏 「自院で経験した虚血性大腸炎53例—開業医としての対処」
 
 
●ポスターセッション  10/10 9:00〜15:00
 
宇田 憲司氏 開業保険医の国民医療への貢献—その法的基盤—
砺波 博一氏 医療安全への対策—応召義務違反を訴える裁判例から
林  一資氏 医事紛争・医療訴訟からみる医療安全対策
松原 為人氏 急性期教育病院と地域へのヘルスプロモーションの拠点を目指した病院新築移転計画のコンセプト
 
 
●ティーチ・イン(討論集会)  10/10 13:30〜16:00
 
皆保険体制の持続可能性と開業医医療—皆保険成功の秘訣は「開業医的医療」にあり
 
(1)基調講演
 「日本の医師歯科医師・保険医の運動の歴史と課題」
  住江 憲勇氏(保団連会長)
  宇佐美 宏氏(保団連歯科代表)
(2)各分科会からの報告
(3)討論
(4)「開業医医療復権・京都宣言」の採択

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