医療法人制度講習会を開催  PDF

医療法人制度講習会を開催

目先の節税額に捕われず長期的視野で

 2006年の第5次医療法改正後、基金拠出型医療法人が医療法人の本則とされ、残余財産の帰属が国や地方公共団体とされたことにより法人設立が鈍化していた。しかし、医療法人の承継にかかる納税猶予制度もでき、医療法人制度にかかる状況が変わりつつあるため、協会はひろせ税理士法人の花山和士税理士を講師として、税制の解説および医療法人制度の相違等を踏まえた整理等についての講習会を、4月18日に開催した。

法人設立の留意点とは

 花山氏は第5次医療法改正後、医療法人を設立する場合は、出資持分なしの基金拠出型医療法人しか設立できず、従来の出資持分ありの経過措置型医療法人を設立することはできないことを説明。経過措置型医療法人を解散するときは、残余財産は出資者に分配され、基金拠出型医療法人を解散するときは、残余財産は国や地方公共団体等に帰属することになると解説した。

 また、基金の拠出者は、医療法人の「利益の蓄積」に対して拠出者としての権利を有しない。医療法人の利益の蓄積をどう管理するかが重要であると指摘。将来の役員退職金の範囲で蓄積する方法、子に事業承継として管理する方法があることを述べた。

 個人と医療法人のもっとも大きな相違点は、最高の意思決定機関が個人か社員総会という点である。経過措置型と基金拠出型の大きな差は個人財産の持ち方が、経過措置型は出資持分、基金拠出型は基金に限定されること。そのため、相続、譲渡で差が出てくることだとした。

解散・事業継承まで視野に

 一定の財産があると相続対策が大変で、個人医療機関を廃業して財産を受け渡せば贈与になることもあると指摘。持分なしの基金拠出型医療法人が管理者交代をしても相続税課税問題は発生しない。次世代が承継していくなら、利益を蓄積しても相続税問題が発生せず、永続的に地域医療に貢献できると述べた。さらに、経過措置型の持分ありだと相続税問題はついて回る。贈与を上手く活用していくことが重要とした。

 また、今回新たに納税猶予の制度ができたが、認定を受ける必要があるため、一人医療法人は使いにくいと説明した

 医療法人設立の目的・動機は所得税の節税対策、事業継承対策および相続税の節税対策、介護サービスへの事業展開、法人格のステイタスなどがある。

 消費税は税率が上がり、所得税は復興所得税が25年間あるため、長いスパンで下がることはないが、法人税は1年早く復興税がなくなり、税率はさらに下がることが予想される。

 医療法人設立のメリット・デメリットを考慮し、院長個人のライフステージにおいて個人的支出が膨らむ時期、特に教育資金や住宅購入資金が必要な時期に法人化すると法人の財産として蓄財されるので、個人で使える資金がその分少なくなりプライベートの資金繰りが苦しくなる可能性もあることを解説した。

 そして、医療法人化にあたっては、目先の節税額ばかりにとらわれることなく、法人設立から解散・事業承継まで長いスパンを視野に入れ、年金制度などさまざまな観点からシミュレーションしていくことが重要だとした。

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