医療安全対策の常識と工夫71/カルテ開示の実際  PDF

医療安全対策の常識と工夫71

カルテ開示の実際

 司法を介す「証拠保全」については、すでにお話ししましたが、今回は、司法を介さずに医療機関側が独自の判断で、患者さん側にカルテを開示する際の留意点を具体的にお話ししたいと思います。

 [1]開示には院長をはじめ主治医の判断が必要
 [2]原本の院外貸出は厳禁(閲覧は可)
 [3]開示に関わる費用は患者側に請求

 [1]に関しては、当然と思われる方もいるでしょうが、意外に医師個人や事務部門が独断で、即時開示要求に応える場合が過去にありました。ご注意下さい。また、診療等に悪影響をきたすことが予想される場合などは、拒否すべきケースも想定されます。しかしながら、開示拒否の理由が客観的・合理的に説明できないときは、患者さん側に不必要な誤解や猜疑心を与えるだけとなりますので、その点は注意が必要です。

 [2]に関しては、医事紛争を前提とせずに、フィルム等を含め患者さんに貸し出すことも日常においてありえるのですが、紛争を前提としていることが疑われる場合は、原本を貸し出すことは不適切と思われます。カルテ等は医療機関側にとっても唯一の物的証拠となるものです。他者による改竄や紛失の可能性を考慮すれば、例え患者さんであっても、医療機関の目の届かない所にカルテを持ち出させることは賢明ではないでしょう。カルテ等の所有権と管理義務は医療機関側にあるのです。

 [3]に関しては、日本医師会が策定している「診療情報の提供等に関する指針」にも記載されている通り、コピー代等を請求できることになっています。医療機関側の毅然とした姿勢を示すためにも、コピー代を徴収することは妥当と思われます。

 次回も引き続き、カルテ開示についてお話しします。

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