医療安全対策の常識と工夫56/論破だけでは解決しません!医事紛争  PDF

医療安全対策の常識と工夫56

論破だけでは解決しません! 医事紛争

 前回には患者さんを徒に刺激しない具体的方法を二つ挙げました。引き続き同じテーマで三つ目のお話をしましょう。

3. 早口・大声・繰り返しには要注意。

 患者さん側の要領を得ない抽象的な話、時には無礼な責めを受けると、徐々に苛立ってきて、話のペースが上がってしまうこともあるでしょう。しかしながら早口というのは説得力に欠けがちです。ただでさえ患者さん側は話を聞いてもらうのに必死で、相手の話を受け入れ難い状態になっていることが予想される訳ですから、医療機関自ら雰囲気作りを阻害する要因を作るのは賢明ではないでしょう。

 ましてや大声を出すなどは、患者さん側を興奮させるのみで、抑止的効果さえ疑わしいものです。ただし、これらは無意識にやってしまう傾向があるので、医療機関側としては患者さん側に会う前から意識して、通常以上にゆっくりと静かな口調で対応するんだ、という心構えが必要と思われます。

 また、医学的説明等を患者さん側が理解できるまで繰り返すことは重要ですが、これも程度によります。患者さんの顔色や目を見れば、ウンザリしているか否かおよその見当がつくはずですから注意して下さい。

 また、同じ意味の内容を、言葉を換えたり例え話を幾つも出すのは賢明ではないでしょう。医療機関側が懸命に患者さん側に納得して貰おうとする姿勢は十分に理解できますが、言葉による誤解や揚げ足を取られる元です。繰り返しが必要な場合は一見、工夫がないように思われますが、あまり修飾をせずに同じ言い回しをすることをお勧めします。

 以上は、京都府保険医協会の現場での経験による助言ですが、もちろん、これらが絶対の法則ではありません。また、医師や従業員の性格や考え方に因るところも大きいと思います。あくまで参考にしていただければよろしいかと思います。

 次回は、医事紛争時の医療費の取り扱いについてお話しします。

ページの先頭へ