医療安全対策の常識と工夫54
対応するのが危険な場合
医療機関側の過誤の有無に関わらず、クレームをつけてくる患者さんのほとんどは、医療被害を実際に被っています。従って、医療機関側としては、賠償問題は別として、倫理の面からもまずは対応しなければならないでしょう。しかしながら、それは患者さん側の態度にもよります。
これは極端な例ですが、医療機関側の人間の家族のことまで調べて、それとなくあるいは白々しく「お宅の娘さんの○○ちゃんは可愛いねぇ」などと、世間話?をしてくる怪しい人間も実際にいました。法的には脅迫罪とならないかもしれませんが、それを言われた方の動揺は、予想に難くありません。そのような態度に出てきた患者さんは、以後にも冷静あるいは合理的な話ができる相手とは考え難いでしょう。タイミングを見計らい帰ってもらうように努めて下さい。それからすぐに京都府保険医協会へ連絡を下さい。時々に応じた助言をさせていただきます。場合によっては弁護士の助けが必要になるかもしれません。
先述したように脅迫とまでは、判断できないケースかもしれませんので、警察は親身になってはくれないかもしれません。警察は基本的に民事不介入ですので、明らかな脅迫(刑法222条)・恐喝(刑法249条)などに抵触しない限り動き難いのです。もちろん「殺してやる!」とか、傍にあった置物など投げつけた場合は脅迫、器物破損あるいは傷害として110番に通報することは可能ですが、まずは医療機関側がどのような場合にどう対応するかを決めておくのが先決と思われます。
以上、ずいぶんと物騒な話をしましたが、このような事態に陥ることはほとんどないといえるでしょう。協会でも厄介な患者さんに対応したり、全国における紛争状況に注目していますが、医事紛争に起因する二次的紛争、つまり深刻な暴力沙汰などは経験なく、あまり聞こえてもきません。あるとしても殴られた、蹴られた程度です。もちろん、それだけでも医療機関側にとっては一大事なのですが、重要なことはそのような事態を予測して、危険を回避するように日頃から具体的な対策をとっておくことです。
次回は、具体的な患者さん対応法についてお話しします。