医療安全対策の常識と工夫(38)  PDF

医療安全対策の常識と工夫(38)

冷静に、慎重にチェックしてみましょう

 患者さん側から突然にクレームを付けられたり、責めを受けた場合に、医療機関側は動揺してしまうこともあると思います。それは、多くの方がどうして良いかわからず、一種のパニック状態になっていることに起因していると推測できます。そのようなことにならないように、先に平常心を保つことの重要性やその方法をこのシリーズを通して述べてきましたが、ここにあらためて、医師としてのチェック項目を確認したいと思います。

 医師に来るクレームは、その態度や人間性までも言及されることがあるのは、既にお話ししましたが、何と言っても医療行為とその結果がトラブルの主要因となることに違いはありません。そこで、医事紛争に関わる医療行為の主なチェック項目を挙げてみますと、(1)診断、(2)適応、(3)手技、(4)説明、(5)事後処置といった5項目になるでしょう。

 京都府保険医協会でも事故報告のあったケースについて、先ずはこの5項目について当該医療機関と患者さんの協力の下に調査をしていきます。お気づきの方もいると思いますが、この5項目は(5)を除き、全て事故もしくは紛争に至る「経過」を確認するもので、「結果」の程度や是非に関わるものではありません。もちろん、結果を無視すると言うことではありませんが、やはり高度な専門分野でのトラブルは、原因や経過を重視すべきと考えます。これは医師賠償責任保険が基本的に「過失責任主義」を採っており、単なる損害に対する「(無過失)補償」の概念がないことにもよりますが、それ以上に医療(現場)の限界や不確実性、予見不可能性といった要素を考慮しないと、結果のみの判断では医療そのものが歪んでしまい、萎縮医療となってしまう恐れがあることがあげられるでしょう。何としてもそれだけは避けなければなりません。

 次回は、(1)診断について更に詳しくお話します。

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