医療安全対策の常識と工夫(15)

医療安全対策の常識と工夫(15)

人として当り前のことではありますが…

 前回では、医療過誤が認められた場合には、患者さんへの謝罪を否定するものではないが、トラブル発生直後で状況が混沌とした時期には、慎重な態度を取るべきと指摘しました。「じゃあ、医療過誤か否かはっきりするまでの間、一体どうするの?」と不安になられる方も大勢おられると思います。

 医師・患者さんの気質にもよりますが、まずは、患者さんとのコミュニケーションを絶やさないことでしょう。気が引けるのでしょうか、医師が当該患者さんを露骨に避けてしまうことがあるようです。また普段通りにしていても、そのように「見られる」場合もあるでしょう。その時、患者さんは「あの医者は何か都合の悪いことを隠しているから、私を避けているんだ」とか「こんなことをしでかしといて逃げている、誠意がない、無礼だ!」と思うことも珍しくはないでしょう。

 このような感情が生まれますと、医療機関側に賠償責任がないとの調査結果が出ても、患者さんが納得する筈もなく、紛争を長引かせるもとになります。繰り返しますが、他愛のない世間話でも良いから患者さんに声をかけることです。入院患者なら病室へ行く、通院患者で滅多に顔を見られないなら電話をかける、どうしてもそれができないなら、看護師や事務の方に代わりをお願いしてもかまいません。とにかく、「貴方を放っている訳ではありません」といった、ちょっとした誠意ある態度を保ち続けることが、スムーズな紛争解決の大きな要因となるでしょう。

 次回は、患者の「知り合い」への対応法についてお話しします。

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