医療安全対策の常識と工夫(8)
医療訴訟―テレビ・ドラマとはイメージが違います
裁判というと、法廷に立たされて相手側弁護士に周りをウロウロされながら、チクチクと嫌みを言われたりするイメージを、お持ちの方もおられるのではないでしょうか?
そのようなことが全くないとは言えないまでも、医療裁判は、思う以上に淡々と運ばれていくことの方が多いようです。裁判官不足のためか、裁判はまるでベルト・コンベアー式に次から次へと進められていきます。前の裁判が終わる前に同じ法廷内でスタンバイしておくこともあるようです。当然のことながら、好むと好まざるとに関わらず、その裁判の状況も自らの裁判が始まるまで見ることになります。
ひとたび訴訟を起こされると、被告である医師は裁判が開かれる度に、法廷へ呼ばれて事情聴取があると考えられがちですが、実際には当該医師が法廷に立つのは1〜2回程度と考えてよいでしょう。もちろん、裁判の動向によってはそれ以上ということもなくはないですが、多くは代理人である弁護士だけで事足りるようです。重要なことは弁護士との協力の下に、陳述書を作成して事情を医学的に、かつ、できる限り文献等のデータに基づいて説明することです。カルテに記載されていることを基本とするのは当然ですが、妥当と思われる場合には、カルテに記載されていること以外の内容を記載しても構いません。つまり訴えられている医療行為の説明が、客観的にできればよいのです。
次回は、和解する際の注意点についてお話しします。