医療安全 72/カルテ開示の留意点  PDF

医療安全 72

カルテ開示の留意点

 前回は、カルテを開示する際に医療機関側が注意すべき点を三つ挙げました。今回も引き続き同じテーマでお話ししましょう。
 [4]コピーする際は可能な限り患者さん側の目前で行う。
 [5]開示する相手の身元を必ず確認する。
 [6]コピー後には過去の診療の頁に加筆しない(コピー後に診療を行った場合はその限りでない)。

 [4]に関しては、実際にトラブルとなった事例を挙げます。医療機関側が事前にコピーしておいたカルテを患者さん側に渡した数日後に、患者さん側から「このカルテは何か不自然だ。都合の悪いところはコピーしなかったのではないか、改竄したのではないか?」とクレームが付いたことがあります。実際には全てコピーされていて、何ら問題はなかったのですが、医療に素人の患者さん側にしてみれば、見慣れないカルテに不自然さを感じたのでしょう。

 ここで提案なのですが、このようなトラブルを回避するためには、カルテをコピーする際に、患者さん側が見ている目の前で行うことをお勧めします。そうすれば無用な猜疑心を患者さん側に与えることもないでしょう。また、忙しいからといって、逆に院内であっても医療機関側の見ていない場所で、患者さん側に自由にコピーさせることは賢明でありません。これは先の[2]でお話しした院外貸出と同様の行為と考えられます。医療機関側にとってもカルテ等は重要な物的証拠なので、その取扱いは慎重にしていただきたいものです。

 [5]に関しては、開示要求が本人以外の場合に、顔を知っているとか、口頭で自己紹介されたのみで開示するのは不適切です。後でどのようなトラブルに見舞われるかわかりません。患者さんの血縁者の場合は、面倒でもその血縁関係が明確に記されている戸籍謄本の写し等を要求して、かつ免許証などで確実にその本人であることを確認すべきです。また、親族であっても患者さんが存命で意思表示可能な成人ならば、本人の承諾書が必要です。これを怠ると刑法134条【秘密漏示】に抵触しかねません。また、2005年4月に施行された個人情報保護法にも関わってくるかもしれません。

 協会では念のため、開示対象者はできるだけ本人、都合が悪い場合のみ配偶者・子どもに限るように助言しています。なお、これらの血縁者以外であっても、委任を受けた弁護士ならば問題はないでしょう。

 [6]については、すでにお話ししていますが、加筆の年月日を記載しない限り改竄を疑われますので要注意です。

 次回は、謝罪文を要求された場合の対応についてお話しします。

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