医療保険部会、「選択と集中」に賛否/次期改定議論スタート
厚生労働省の社会保障審議会・医療保険部会(部会長=糠谷真平・国民生活センター顧問)は7月15日、社保審・医療部会に続いて次期診療報酬改定の基本方針策定に向けた議論を始めた。この日は、中期プログラムの別添工程表に盛り込まれた次期改定での「選択と集中」の考えに基づく配分の見直し方針に対し、医療関係の委員が「全体の底上げが必要」と訴えたが、経済団体や保険者団体の委員からは保険者財政の悪化などを踏まえ、めりはりのある改定を訴える意見が相次いだ。
厚労省保険局総務課の神田裕二課長は、資料説明の中で「選択と集中」の考え方について「前回の改定では病院と診療所の配分となったが、現段階では特定のものを指しているわけではない。一般病床の中や診療科の重点化も含まれている」と説明した。藤原淳委員(日本医師会常任理事)は、過去の診療報酬改定で救急、産科、小児科などに手厚く配分されてきたとし「診療所も危機的な状況にある。診療報酬全体の底上げが必要」と強調した。
これに対し、齊藤正憲委員(日本経団連社会保障委員会医療改革部会長)は「大幅な引き上げを求める声は強いが、健保組合の財政状況なども考慮する必要がある」と主張。救急医療などに手厚く予算措置がされていることを踏まえ、診療報酬と補助金などの役割の明確化が必要との認識を示した。
逢見直人委員(連合副事務局長)も「診療報酬の引き上げは保険料負担にはね返る。限られた財源を大胆にシフトするダイナミックな視点が必要」と述べた。対馬忠明委員(健保連専務理事)も健保組合財政の悪化を指摘した上で「どの部分に重点的な評価が必要かを具体的に指摘する議論が必要」と述べた。
医療保険制度に「国民の視点」を反映させる観点から新たに委員に加わった樋口恵子委員(高齢社会をよくする女性の会理事長)は「医療をどう回復していくかという観点の議論が必要」とし、「産科や救急に手厚く充てるのは結構だが、国民の立場では『分散と公平』を図ってもらいたい」と主張。軽症高齢者の救急搬送が多い背景を分析する必要性などを訴えた。
多田宏委員(国保中央会理事長)は、2008年度改定結果検証で算定割合が少なかった後期高齢者診療料について「かかりつけ医の機能の萌芽と思われたが、ほとんど利用がない。しかし、みんなが利用する努力をしなければならない。誰も利用しないから駄目ということではない」と主張した。(7/16MEDIFAXより)