医療保険法案の早期可決を/オバマ大統領、異例の議会演説  PDF

医療保険法案の早期可決を/オバマ大統領、異例の議会演説

 オバマ米大統領は9月9日、内政の最重要課題と位置付ける医療保険改革法案について議会の上下両院合同会議で演説し、歴代政権がなし得なかった改革を「今こそ実現するときだ」と表明。政治的思惑や党派対立から脱却し早期に法案を可決するよう要求した。

 同法案をめぐっては、公的保険導入など政府の関与度合いについて与党民主党と野党共和党の対立が深まり、国内世論も二分。オバマ政権は発足後、最も重要な局面を迎えており、法案の成否は今後の政権運営を大きく左右する。この時期には異例の議会演説で、テレビを通じて国民全体にも理解を呼び掛けた。

 オバマ氏は、無保険状態の国民に保険を提供し医療費も抑制することが「究極の目標」だと強調。そのために公的保険の導入を求める一方、非営利の協同組合による競争強化など他の案も「検討の価値がある」と述べ、共和党などの主張に配慮し柔軟姿勢を示した。

 改革のために今後10年間で必要な約9000億ドル(約83兆円)の費用について、イラクとアフガニスタンの戦費より少額だと指摘。

 また8月に死去したエドワード・ケネディ上院議員から、死後に届いた手紙で改革実現を託されたことを紹介し、党の枠を超えて遺志を継ぐ必要性に言及。さらに「この計画を改善するより、つぶす方が政治的に得だと考える連中は相手にしない」と述べた。

 オバマ氏は年内の法案成立に向け、10月までの議会可決を目指している。共和党や保守層の強い選挙区を地盤とする民主党議員は「政府の過剰な関与」を非難している。

●オバマ大統領の演説要旨

 オバマ米大統領が9日に行った演説の要旨は次の通り。一、何百万人もの国民に無保険の苦しみを味わわせているのは、先進国では地球上で米国だけだ。今は行動する時だ。一、3つの基本目標を達成する。医療保険の既加入者には安心と安定、無保険者には手ごろな保険を提供。家庭、企業、政府の医療費の増加を鈍らせる。一、改革の主眼は保険会社の悪習を絶ち、無保険者に保険を提供することで、公的保険導入は手段の1つにすぎない。究極の目標を達成するため他の選択肢も排除しない。協同組合や非営利組織の設立も検討の価値がある建設的な案だ。一、個人や中小企業が医療保険に低価格で加入できるような新たな保険市場を創設する。【共同】(9/11MEDIFAXより)

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