医療ツーリズム、地方が熱視線/モニターツアーなど活発化
地方自治体が「医療ツーリズム」に熱い視線を注いでいる。中国の富裕層を対象にモニターツアーを企画し、商品化にこぎ着けた自治体もあり、関係機関を集めた協議会や研究会の発足も相次いでいる。2011年度からは政府も推進に本腰を入れる方針だが、反対論も依然として根強く、「公的保険が充実した日本ではなじみにくい」との見方も出ている。
日本政策投資銀行は、20年時点の医療ツーリズムの国内潜在需要を年間43万人、市場規模を約5500億円とはじく。こうした数字は地方にとっても魅力的で、福島県や新潟県、長崎市などがモニターツアーを相次いで実施。福島県の担当者は「大都市だけでなく、地方でも一定以上の水準の検診や治療を提供できるのが日本の強みだ」と話す。
さらに、大阪市は8月、庁内に「大阪国際医療ツーリズム研究会」を設置し、11年度中の事業計画案策定に向けて検討を始める予定だ。熊本県や沖縄県などでも研究会や検討会が発足しており、自治体の動きは活発化している。
日本政策投資銀行は「高度な医療技術・設備と豊富な観光資源を有するわが国も、多くの医療ツーリストを呼び込むことができる可能性は十分にある」と指摘。一方で、民間シンクタンクの大和総研が7月公表したレポートでは「公的保険が充実した国では、ビジネス色の強い医療ツーリズムはなじみにくい。日本の医療供給体制の改善や日本経済の成長につながる可能性は極めて低い」と否定的な見方が示されるなど、医療ツーリズムの可能性については、専門家の間でも見方が分かれている。(8/12MEDIFAXより)