医療ツーリズム、国内で認知度低く/マナー・待ち時間懸念
健診や診療を目的として来日する外国人を日本国内の医療機関で受け入れる「医療ツーリズム」に対する日本人の認知度は低く、外国人が受診することによる待ち時間の延長や外国人のマナーを懸念している人が多いことが、経済産業省の国際メディカルツーリズム調査事業の報告書で分かった。政府は、6月に策定する新成長戦略に医療ツーリズムの促進策を盛り込むために検討を加速させているが、日本人患者への影響を小さくし、受け入れに対する不安を払拭することも課題となりそうだ。
調査は、今後の医療ツーリズムの可能性などを検討するため、2010年2−3月、国内の医療機関で外国人患者24人を受け入れ、人間ドックなどの健診を実施。受け入れ医療機関を訪れた日本人患者ら441人にアンケートを行った。
調査結果によると、日本人のアンケートで「医療ツーリズム」という言葉を知っていた人は6%にとどまり、「初めて聞いた」と答えた人が77%に上った。
医療機関が外国人を受け入れることに対する不安を尋ねたところ、29%が「外国人のマナー」と答え、「待ち時間が長くなる」とした人が26%。外国人患者の受け入れにあたっては、日本のマナーに従って健診や治療を受けることを事前に依頼することや、待ち時間に影響が出ないようにすることを望む声が多かったほか、言語面での問題や院内体制の不備を指摘する意見もあった。
ただ、こうした点に留意し、日本人患者への影響がないようにすれば「医療ツーリズムを推進すべき」と答えた人は62%に上り、報告書は「外国人患者の受け入れ体制を十分に構築し、日本人患者への影響を小さくすれば、通院している医療機関で医療ツーリズムを推進することを肯定的にとらえている日本人患者が多いと見られる」との見方を示している。
一方、国内の医療機関で健診を受けた外国人でアンケートに回答した20人のうち75%が「日本でまた健診を受けたい」と回答。医療サービスの質や内容で日本を渡航先に選んだ人が半数に上った。再び日本で健診を受けたい理由としては「医療技術のレベルが高い」(中国人)、「最新の機器を使った正確な診察を受けることに信頼できる」(韓国人)などが挙がった。報告書は「外国人顧客に対しては、特に医療の質・内容に訴求したプロモーションが有効」と指摘している。(5/17MEDIFAXより)