医療とは戦争ではないのか?

医療とは戦争ではないのか?

 戦争に反対する協会の主張としては穏当ではない書き出しになるが、医療は病魔との不断の戦いではないだろうか。この戦いはにらみ合いの冷戦というようなものでなく、日夜砲弾が飛び交い死傷者が報告される熱い戦争である。

 公衆衛生の発達・環境の改善・予防接種の普及などで、退けることができるようになった敵も少なくはない。しかし古くはAIDS、近年ではSARS、直近では新型インフルエンザ(豚インフルエンザ)のように新たな敵が次々と登場してきている。加えて守るべき国土・国民は、高齢化の進展と共に否応なく増大しているのである。

 さて、現在平時である日本の2009年(平成21年)防衛予算は5兆円弱で全国家予算の5・4%である。実際に砲弾が飛び交う状況でなくても、これだけの費用が必要と考えられ予算化されているのである。

 これに対して、医療費は34兆円(07年)で防衛予算の約7倍に相当するが、これは受診時の自己負担金、企業の拠出分を含んでいるからそれを差し引けば国家が支出する金額は約8兆円ということになる。

 また、冷戦が熱戦になった場合に軍事費はどれくらい増えるかについては、太平洋戦争中の資料をみるとわかるが(大蔵省編『昭和財政史』第4巻 東洋経済新報社)、昭和12年(日中戦争の勃発した年である)の47億円が太平洋戦争が始まった翌年の昭和17年には5倍近い244億円となっている。そして昭和19年度の軍事費は、国家予算の実に85%を超えるものであった。

 単純にこの数字をもって、医療費の増額を要望するものではないが、実際に日夜戦いが行われている医療の分野の予算を国民の健康な生活を守るための戦争ではないかと考えて見直してみる必要があると考える。

(山科・山田一雄)

ページの先頭へ