医界寸評
昨今のアベノミクスの中で、医療は成長産業である、としきりに強調されている。急激な人口の高齢化や国民の健康志向により、医療関連産業は国民皆保険制度下で拡大を続けてきた。医療現場の必要から進歩発展してきたものである▼現在高齢者医療では、介護保険制度開始後に医師の関与が減り、例えば施設では、老人病院から介護保険施設へ、更に、厚労省と共管の国交省が推進するサービス付き高齢者向け住宅へ、と変遷してきている
▼医療技術では、産業界の技術をどのように医療に取り込むか、が主眼になっている。当然、開発費の回収が重視される。これが、いわゆるイノベーションとして、もてはやされている
▼日本の国力が低下した、といわれる昨今でも、基礎医学分野の論文数はまだ世界有数である。しかし、臨床医学の論文数は相対的に減ってきた、と言われている。複雑で規制の多い制度に縛られ、医療現場の余裕がなくなったからであろう▼元来、医療は現場から発展してきたものである。しかし、今は経済界のために利用されている
▼更に、新しい専門医制度が施行されると、医師が厚労省に直接管理される。医師会等、医師の団体は専門医制度で分断、無力化され、医療現場からの、医療制度、政策への提言力が割かれる▼このままでは、経済は回復しても、医療はますます貧弱になる。(恭仁)