医界寸評  PDF

医界寸評

 「全ての成年後見を受けている人に(選挙権を)広げることが制度として正しいのか議論がある」と自民党の幹事長は述べ、3月14日東京地裁が下した“成年後見人が付くと選挙権を失う公選法規定は違憲”に対して控訴の方針を示した

▼地域の医療に携わる現場の医師たちに持ち込まれる成年後見の相談や診断書依頼は決して少なくはない。制度の利用者は13万6000人といわれるが、高齢社会の進展による認知障害、あるいは自閉症や知的発達障害を抱えながら社会生活を過ごしている人たちは結構多く、課題も様々指摘される

▼コントロール不良の慢性疾患患者が実は認知障害で薬を飲んでなかったことを医師も家人も気づいていなかった例や、銀行への預貯金そのものを忘れてしまっている独居の高齢者という話も聞く。こうした人たちの暮らしを支えずに、選挙権を取り上げる国は聞いたことがない

▼「全ての人々の暮らしを守る、特に貧しい人々の暮らしを守る」。3月14日バチカンで選任されたフランシスコ新法王は19日の就任演説でこう述べ万雷の拍手を浴びた

▼やけに居丈高な姿勢が目立つ昨今の政治を見聞きするにつけ、こうした“人権の規範”が一つの宗教を超え、広く世界に広がることを願いたい。地域で培われた医師たちがその目と力を成年後見の分野でも存分に用いることを望んで。(光)

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