医界寸評  PDF

 最近いたましい交通事故の報道が多い。4月29日に関越道で発生して7人の死者を出したバスの事故も考えさせられることが多かった。関係者の責任は重大であるが、責任問題とは別にこの事故は自由競争の危なさを露呈している。価格競争のもとでは消費者は安い方に流れ、マスコミも「格安ツアー」とそれを煽る。長い目で見ると価格の低下は質の低下を引き起こすのではないだろうか。コストダウンのノウハウを確立した事業者に対して行政が介入しても、一度低下した品質(モラル)の回復は困難だろう。

 医療にも自由競争原理の導入と盛んに言われていた。自由競争はほとんどの場合、価格競走を意味すると予想する。幸い現在の国民皆保険制度のもとでは公定料金のため、価格競争の起こる余地は少ないが、この枠が外されてしまうと一挙にバス会社と同じような価格競争に巻き込まれてしまうだろう。そうなると今必死で保っているモラルは崩壊してしまう可能性さえある。そうなってからではもう遅いのである。TPPへの参加により国民皆保険の空洞化、価格競争とつながることを懸念する。

 事故が起こると、「あってはならないことが起こった」と表現される。しかし、事故はゼロにすることは不可能であり、一定確率で必ず起こる。それを限りなくゼロに近づけるために努力とコストが必要である。この努力とコストに対して国民の理解がほしい。(内)

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