医界寸評  PDF

 去年の12月21日に原爆症認定集団訴訟(近畿3次)大阪地裁判決で原告側が勝訴した。この判決の中で重要なことは、「誘導放射化物質及び放射線降下物を体内に取り込んだことによる内部被曝の可能性がないかどうかを十分に考慮する必要があるというべきであり、加えて、内部被曝による身体への影響には、一時的な外部被曝とは異なる性質が有り得ることを念頭に置く必要があるというべきである」と内部被曝の影響を指摘した画期的な判決である点だ。この判決には、福島の原発事故による内部被曝の問題がとりあげられたことも大きな影響を与えたのではないか。

 ただ、ヒロシマ、ナガサキ、ビキニと日本は3度被爆者をだした。二度と被爆者を出してはいけない中での福島の原発事故。ここで、被曝者を出してしまったこと、被曝者の犠牲がなければ今回の判決が出なかったとしたならば、悲しむべきことではないだろうか。

 ヒロシマ、ナガサキから60年以上たって、内部被曝の影響を認めた判決。国はこの判決の重要性をしっかり受け止め、現在行っている原爆症認定行政が誤っていることを認識し、被爆者に対する国の責任を一刻もはやく果たしていかなければならない。そして、世界で唯一被爆した国として核抑止力の傘から脱却して、核兵器廃絶にむけて進む責任がある。今回の判決が、福島の原発事故で被曝した人たちの大きな力となってほしい。(治)

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