医界寸評
米国でオバマ大統領が内政の最重要課題としていた医療保険制度改革の法案が成立した。「社会主義につながる」など、わが国では考えられないような反対理由もあったようで、大統領自らが直接電話で説得工作をするなど、さすがに長年成しえなかったことだけに、他の予定を変更してまで大変な労力を注入してこぎつけた今回の下院での可決のようである。皆保険とまではいかないものの、それに近づくことになる
▼一方、わが国は世界に誇る皆保険制度であったはずが、あちこち綻びがでて、それが危うくなってしまっている。医療保険のコマーシャルをジャンジャン流し、現在の医療保険制度がシッカリしていれば必要とは思えない商品を声高に宣伝している
▼本来、福祉や社会保障という公で行うべきものも、お金儲けのネタにするという米国の考え方が限界にきての今回の保険改革なのではないだろうか。自由経済での高い医療費に支えられている米国の医療関連産業にとっては、わが国のような統制経済状態の医療保険ではたまったものではないのであろうが、到底そこまでいくはずはないし、まともな医療を受けられない人が減るのはいいことに違いない
▼鳩山首相も医療崩壊問題にオバマ大統領が実行したくらいの熱意を持って取り組んでほしい
▼米国の無保険の人が減ることを喜びつつ、わが国で無保険となる人が増える現状を憂えざるを得ない。(門雀庵)