医界寸評
6月18日、厚労相の私的諮問機関が「安心と希望の医療確保ビジョン」をとりまとめた。82年以降初めて、わが国の医師総数が不足しているとの認識を示し、医師養成数抑制方針を改め、増加方針を打ち出した。医師養成数抑制方針は82年に閣議決定され、97年の閣議決定でも維持された。政府はこれまで「医師が増えると医療費が増える」「医師不足ではなく、偏在が問題である」としてきた。「医師の需給に関する検討会報告書」(07年7月)では04年の医師数について、医師の勤務時間の現状とあるべき姿とのギャップを「不足医師量」とすると、04年においては9000人が不足し、将来的には22年に需給が均衡するとされている
▼しかし、経済協力開発機構(OECD)ヘルスケアデータでは04年医療施設で働く日本の医師数は約26万人、人口1000人あたり2・0人で、OECD平均3・0人と比べて14万人も医師数が少ないことになる
▼ビジョンでは「医療制度の改革を進める上では、将来をしっかりと見据えた長期的なビジョンを持ち、現場の声を聞きながら政策の立案や推進を行うことが必要であり、『安心と希望の医療確保ビジョン』を示し改革を進めていく」と述べている。医師が一人前になるのには医学部入学から約10年は必要とされ、この決定は10年遅いと言わざるを得ない。これまでは将来をしっかりと見据えた長期的なビジョンを持っていなかったのか。
(ムーミン)
【京都保険医新聞第2647号_2008年7月14日_1面】