医界寸評
2006年12月、第61回国連総会において「障害者権利条約」が採択された。この条約は、障害者固有の尊厳、個人の自律及び自立の尊重、非差別、社会への完全かつ効果的な参加、差異の尊重と障害者の受容、機会の平等などの原則が骨子となっており、何よりもその策定の全過程に、障害を持った当事者が大きく参画したことが画期的な特徴だった
▼条約はすでに世界77カ国が批准したが、日本はまだである。遅れの要因の一つは、批准のためには現在の福祉・教育関連法規の大幅な改正が必要とされていることにあった
▼だが政府は2009年1月に批准を目ざす方針を発表し、政権交代を経て12月には、内閣に「障がい者制度改革推進本部」が設置された。そして本年1月からは、委員24人のうち14人は障害のある人と家族から成る「障がい者制度改革推進会議」が発足し、すでに2回の会合を開いている。その主な課題は、(1)障害者権利条約の批准に向けた障害者基本法の抜本改正、(2)障害者自立支援法に代わる障害者総合福祉法(仮称)の制定、(3)障害者差別禁止法の制定だという
▼ところで右に見るように、今の政府は「障がい者」という表記を採っている。他方には、「障碍者」の「碍」を常用漢字に入れよと運動をしている人もある。まだ日本語表記さえ落ち着かない有様で、不安と期待とが半ばしつつも、改革への新たな胎動は生まれているようだ。(は)