医界寸評
医療崩壊が止まらない。全国の国公立の4分の3が診療を縮小していて、最近では、千葉県の銚子市立総合病院(393床)が、9月末で休止した。医師不足と経営難が原因であり、国もようやく医師不足を認め、文科省は来年度医学部の総定員数を現行の7793人から、8560人に引き上げる方針を決めた
▼医師不足の引き金を引いたとされる臨床研修制度であるが、今年の4月時点で、臨床研修修了者の大学への帰学率(出身大学以外を含む)は55・9%と発表された。制度導入前の02年は71・4%である。地域ブロック別に見ると、関東が82・3%と最も高く、四国28・7%、東北32・7%、中国39・7%と低迷している。人口50万人以上の都市を持つ都道府県での帰学率は制度開始前とほとんど変わらないのに比して、それ以外の地域では半減している
▼一方、平成19年度に臨床研修を終えて小児科に進んだ新人小児科医の6割以上が東京・大阪などの都市部に集中し、奈良、和歌山、新潟など22県は5人未満で、宮崎はゼロ、山梨、徳島、沖縄は1人しかおらず、医師の偏在があらためて浮き彫りになった。ちなみに京都は32人で、東京108、大阪47に次いで多い
▼元々、制度開始前から、他所から地方の大学に入った者は、大学に残らない傾向があった。単に定員を増やすだけでなく、地元枠を増やしたり、奨学資金制度の拡充など、地元の大学に残る方策を考える必要がある。
(彦)