医界寸評  PDF

医界寸評

 「遠隔診療」のシステム導入の案内が自院に度々届くようになった。2015年8月10日付で厚生労働省から各都道府県知事に出された事務連絡で事実上遠隔診療が解禁されたらしい。従来医師法第20条を踏まえ、診療は医師と患者が「直接対面して行われることが基本であり、遠隔診療はあくまで直接の対面診療を補完するものとして行うべき」であり、離島や僻地の患者を診察する場合など、対面診療が物理的に難しいケースを除いて「原則禁止」と捉えられていた▼今回の通達で、対面診療を事前に行うことが必ずしも遠隔診療の前提条件ではないことが明確にされた。「骨太の方針2015」に、医療分野のICT化推進で「遠隔医療の推進」が盛り込まれたためだ▼患者さんが診療をネットショッピングする時代になった。医師の仕事は様々だが、開業医に似た仕事が期待される総合診療専門医に求められる「6つのコアコンピテンシー」は遠隔診療では余り必要とされない。遠隔診療の目的は気軽に医療へアクセスすることで重症化を予防することにあるらしいが、はたして対面診療を受けずに可能なのだろうか▼個人の都合で遠隔診療を利用するのは別にして、行政として医療過疎地へ対面診療を提供する努力を放棄するつもりか。対面診療を前提としない遠隔診療が保険適用されないことを願う。(恭仁)

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