医界寸評  PDF

医界寸評

 桜が咲いて新年度を迎え門出の季節だが、その前には別れがあり、2人の医学部退官教授の最終講義に出席した。ともに定年前の決断で、より若い力のあるうちに次のポストでの活躍が期待され、早期に異動する例が最近増えているらしい▼大学で診療と教育と研究という重責を担って活躍された過酷な緊張の日々から解放される安堵感が見て取れ、長きに亘るご奮闘に心からの祝福を送った▼印象的なのは、一人前の医師として自覚できるまでの下積みの日々、次々に新しい患者さんとその病気に向き合って地道な学びを繰り返す暗中模索・悪戦苦闘の新米時代の鮮やかな思い出話である▼始めはバラバラに認識された病態がようやくまとまるようになり、敷衍化され分類でき(診断がつき)どんどん数がこなせるようになると、個々の患者さんの“人”が見えなくなっていく▼一人ひとりの患者さんからよく聞いてよく診て、その“人”にしっかり向き合える医師になってほしい。時には基礎研究に戻る選択もあるだろう。先輩医師の適切な指導のもと、チームの中で人に見守られ医師は育てられていく▼来年から始まる新専門医制度で日本の医師養成が変えられようとしているが、医師になろうとする人のそれぞれの個性に見合った自由な学び方の選択を保障することが何より大切なのではないだろうか。(さ)

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