医界寸評
J・S・バッハはライプツィヒの聖トーマス教会で、自作を奏でていた。ステンドグラスで飾られた教会内で、聴衆はチェンバロのまわりに陣取って演奏を聴いていたが、それは同時に祈りを捧げることでもあった。バッハは曲を通して神を伝え、聴衆は曲の背後に神を感じた▼今の我々はどうであろうか。バッハを聴くために、コンクリート造りの無機質な音楽会場へ足を運んでも、そこに神を感じることは難しい▼ところで、いい音楽を聴くと、なぜいい気持ちになるのであろうか。物理学的に考えると、お互い作用を及ぼすには、それぞれが同じ性質である必要がある。つまり同一次元(ディメンション)ということである。音楽は空気の振動であるから波であり、それが心に影響するのであるから心も波である。心は身体やまわりの環境から影響を受けるので、身体やまわりの世界も波ということになる。この中で自分の自由になるのは心だけであり、心の持ち方一つですべてが変わるということである▼長い間、人々にとって、「強いこと」が最も大切な事柄であった。その後、時代が進むと、「正しいか正しくないか」がそれにとって代わり、さらに時代が進んで21世紀になると、「楽しいかどうか」に変わった。医療制度でも政治でも、心に楽しさ、夢がなければ何も動かないということである。(Clear)