医界寸評  PDF

医界寸評

 今夏の暑さは異常だったが、8月15日終戦の日には平和を望む人々の思いが今まで以上に熱く語られ、戦後70年という節目にふさわしい祈念の年になった▼米国では20年ぶりに原爆展が開催。丸木位里・俊夫妻の「原爆の図」が初めて展示され、広島・長崎への原爆投下を命じたトルーマン大統領の孫が、悲惨な実体験を語った被爆者とともに核兵器廃絶を訴えた▼マスコミ報道でも、NHKは見応えのある戦争関連番組を組み、70年にして漸く出てきた史実を伝え、歴史の真実は時を経ても埋もれることなく、改めて過去を冷静に振り返れることを教えてくれた▼今国会で審議中の「安保法案」のお陰で過去の戦争が切実な今の問題として受け止められたのは間違いなく、若い人たちが「自分たちが本当に戦争に行かされるかも」という、人ごとでない危機感を抱いたのは久々のことではないか▼余りにも回りくどい、得意の決まり文句の羅列に終った戦後70年安倍談話に対し、「先の戦争に対する深い反省とともに、今後、戦争の惨禍が再び繰り返されぬことを切に願い」と天皇の言葉は明快だった▼戦争で失われた多くの犠牲者を悼み、感謝を捧げながら生きてきた戦後の国民の努力をこそ今讃えるときではないか。民主主義、平和主義を掲げ世界に冠たる長寿の国を築いてきた自分たちの力を誇りたい。(さ)

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