医界寸評
相手の意見をよく聞き理解しようと努め、また自分の意見を分かりやすく述べて理解を求め、お互いの見解の相違を冷静に見つめながら、議論を重ね論点を深めることで共有の幅は広がる▼民主主義の根本は議論すること。暴力でなく話し合いで解決の方向を探ろうという強い意志がまず必要で、始めから分かり合おうという意志のないところに議論は成立しない▼実のある議論を展開するためには、議事の内容に関する一定の基礎知識は不可欠で、当然知っているべき最低限の知識も持たないまま議論に参加することは、本人に意図するつもりはなくても結果として大きな妨害になることもある▼特に歴史的事実の確認は、過去の事象の丁寧な検証作業から蓄積された膨大な知識を真摯に学び、前提とされる共通認識を得た上で初めて全体像に迫れるという知性が問われる課題である▼少しでも人類がましになることを願うなら、真実を確認し、不幸な失敗を再び繰り返すことのないように教訓として次世代に伝える責務がある▼来月京都で開かれる日本医学会総会と同時に開催する「医の倫理を問う−過去・現在・未来」は、当会も実行委員会の一翼を担い参加している企画で、70年前の戦時に日本の医師達が行った医学犯罪を問い、今とこれからの医の倫理の課題を議論する。多くの会員のご参加をお願いします。(さ)