医界寸評  PDF

医界寸評

 
 先日「医の倫理 京都プレ企画」で行われた、法政大学総長田中優子氏の講演「江戸から学ぶ日本の倫理」を聴講した。江戸時代の医師は本草学(博物学)者であり、医業のほか、学者・寺子屋師匠・剣術師範・農業等で生計を立てていたが、金貸し・太鼓持ち・仲介業を副業とした医師もいたという▼日本の国民皆保険制度は、国民に廉価で良質な医療を提供し日本を世界一の長寿国とした。従事する医師も、医業に専念すれば生活はできた。6年間の学問が矜持となり、地方政治や社会問題、住民の健康福祉事業に取り組んでいる医師もいる▼第二次世界大戦後、文化や伝統の違いを忘れ、何でも米国流をマネた結果、日本社会はかなり歪んできた。今またアメリカに尻を叩かれたアベノミクス第三の矢で「岩盤規制」を悉く打ち抜き、企業が最も活動しやすい社会を作るという。企業は社会貢献もするが、新規事業に進出する際は収益が出るか否かを重視する。職業倫理より金儲けが優先となる。医療は金儲けと疎遠なはずだが、医療で稼ごうとする政策が進んでいる▼企業やマスコミの太鼓持ち医者や、似非医療への仲介を業とする医者が跋扈する社会が来るのだろうか?今までの様に地域医療に携わって、赤ひげとしての生涯を送ることができるのだろうか? 総選挙の結果は出ているはずだが。(恭仁)

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