医界寸評  PDF

医界寸評

 旅客機の失踪、旅客船の転覆、沈没と悲痛なニュースが相次いだ。現時点ではどちらも人為的な要因によるもののようだ。現代、あらゆる分野で器機の進歩はめざましく、それらを使いこなすはずの人間が追い着けなくなっている状況ではないのか▼自分が身を置いている医療の分野に於いてもしかり。中核病院を受診すると、聴診器を使わない循環器専門医、「痛い」と訴える部位に触ろうともしないで、MRIの予約を取る整形外科医等々。上気道症状を訴えて来院した初診患者さんに、「何があるかわからないから」と、腹まで触って時間を浪費する(?)小生のような存在は化石なのであろうか▼でも、患者さんのこの一言に救われる日々である。「病院に行って、こんなに丁寧に触ってもらったのは初めてです」▼心電計、エコー、単純X−P+αくらいしか手駒を持たない町医者にとって、我が身ひとつで可能なテク、問診・視診・触診は素晴らしい武器となり得るなど幻想の世界なのだろうか▼駆け出しの研修医時代、当時の最先端機器を他に先駆けて導入していたボスの一言が、あらためて胸に突き刺さる。「どんなに優秀な機械でも故障することはある。おかしいと思った時は患者さんを観ろ!」▼ヒューマンエラーをゼロにするのは不可能だろう。可能な限り少なくする努力を忘れないようにしたい。(呑鉄童)

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