医界寸評  PDF

医界寸評

 先月の京都新聞の連載で、都会の高齢者の実態を知り驚いた。高齢者の孤立化は、田舎だけの話ではないようだ。昭和40〜50年代に開発されたニュータウンでは、高齢化が進み、建物の老朽化も相俟って、空室も増えている

▼国がこの空室を使い医療介護施設を造り、高齢者だけ住む町の地域包括ケアシステムを作るという。高齢者の町というと、アメリカの「退職者村」を想起するが、ここは自ら望んで移住する町。日本の町は、老人が取り残された町。どちらも若者や子どものいない町だが、アメリカの町は絶えず新規の移住者が来る。日本の町では、老人はいずれいなくなり、地域包括ケアシステムが機能しなくなる。過疎地のこのシステムが絵に描いた餅であるように

▼老いも若きも住んでいるのが本当の街。子どもは老人から学び、老人はそこにいることで社会に貢献している。人が手を入れなければ国土は荒れる。老人だけになり、通う人のいない道は消える。渡らなくなった橋は朽ちる。耕さなくなった畑は藪になり、下草刈や間伐もしなくなった山は崩れて川を堰き止める

▼この歴史ある日本にTPPは有害無益だ。人と資本のさらなる集中が進み、国が壊れる。歴史風土に無関心に、資本の自由な活動を最優先させるために国土を消耗する移民の国アメリカの制度はいらない。(恭仁)

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