医界寸評
金融庁は、保険商品の事実上の現物給付解禁に踏み出そうとしている。現在、保険会社が契約者に物・サービスを提供する「現物給付」は禁じられているが、この代替として、保険金を契約者ではなくサービスを提供する事業者に支払うことを可能とする「直接支払いサービス」が提案されてきた
▼当初は“3割もの「窓口負担」の備えに民間医療保険を”|当社の医療保険に加入されれば代わってお払いしますよ。次いで、世界標準の医療をとうたって様々な診療内容にまで拡大する。混合診療解禁を目指し、TPP加入も後押しする。民間医療保険の市場形成のため公的保険が崩され、民間版「医療保険」の誕生となる。米国のように保険会社が医療提供の可否や、治療や薬の内容にまで立ち入って範囲を設定し、医療費の抑制を図る。このことは株主の利益追求を命題とする営利企業ならあたりまえ。民間保険は生命保険、損害保険と同じ「金融商品」で、利益をあげることが目的なのである。「社会保障」である(公的)健康保険とは決定的に違うところである▼これにより医師の裁量権は大幅に制限され、患者は提携保険会社に加入していなければ望む医療は受けられず、医療機関も保険会社の意向に添わねば、契約解除もあり得るとおどされる
▼映画「ジョンQ」、「SiCKO」の世界がすぐ前に。(木鼠)