医界寸評(MYCONOS)

医界寸評(MYCONOS)

 新幹線のトイレは、車椅子を利用する方も使い易いように種々の装備がされており、メカ好きの筆者としては実に興味深くワクワクする。N700系列車のトイレは初めてだ▼扉を開けて入ると、左側に深い洗面ボウル(シンク)の洗面台がある。でも赤い文字で「手洗い用ではありません」と書かれており、上には「オストメイト専用設備」とあるではないか。「オストメイト」!! 何のことだろう? 数秒後、やっと人工肛門などを造設した方たちのことと思い至る。よく見ると、ボウル内は便器と同じ排水構造になっている。なるほどこれは便器だ▼だが、このオストメイトという語を、いきなりぶつけられて誰もがすぐに人工肛門などを思いつくだろうか。おそらく何のことかわからず、真っ黒な樹脂製のボウルを妙に思いながら、通常の手洗いとして使ってしまう方もいるだろう。それは具体的でない表現が対象の理解を妨げてしまう例だと思う▼思い返すと経済では「グローバル・スタンダード」、医療では「ジェネリック」などという標語もその傾向があった。直感的にわかりにくい。そしてやはり「オストメイト」には無理があるのではないかと思いつつトイレを後にした。(MYCONOS)

 注)オストメイト【ostomate】 事故や排泄障害のために、腹部などに排泄のための開口部―ストーマ(人工肛門・人工膀胱)を造設した人のことを言う。

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