医界寸評(光)

医界寸評(光)

 「赤紙がきた」といえば、その時代に痛恨の経験を持つ方々からお叱りを受けるかもしれない。しかしどうしても違和感が残るのは「新型インフルエンザ」をめぐる報道である▼わが身医師であるからこそ、あらゆる情報に関して貪欲に知りたいし、公的な意向の発表にもついていけるように感覚を研ぎ澄ませている。感染力が強いが毒性は弱そうだ、と聞けばホっとするし、“感染症例の疑い”が解除されれば肩の力も解除する。いざパンデミックになれば、もちろん最前線に躍り出て働く気概もないではない▼先月末に「フェーズ5」へ格上げしたWHOの勧告を知れば、医師としての覚悟を固める。家族や職員には到底理解できないだろう、これは医師の“責任感”“職業倫理”とでもいうのだろうか▼“疑い”症例をめぐって厚労大臣と横浜市長が悪口合戦をしたという記事に接してあまりの見識のなさを疑ったし、これで政局は当面動かないなどという憶測記事を見るのも気持ちのいいものではない▼経済活動と国民の生命保持はこれまでにも相克の関係にあった。第一線に働く医師たちは経済至上の現場にやり切れず“退場”し始めている。6月にまとめられる「骨太の方針09」が医療や社会保障をどのように扱っているか注視したい。「自己責任」や「医師の倫理感」という対応ではこの先さらにグローバル化するウイルスたちの挑戦には勝てないだろう。(光)
 

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