医師不足対策、6倍の263億円を概算要求/文科省・高等教育局
医学教育などを所管する文部科学省高等教育局は28日、2009年度予算の概算要求項目をまとめた。福田康夫首相肝いりの「5つの安心プラン」に盛り込まれた医師不足対策として、前年度予算の44億5500万円からほぼ6倍となる263億3872万円を計上した。厚生労働省の「安心と希望の医療確保ビジョン具体化検討会」の中間取りまとめ案に「09年度は少なくとも過去最大の医学部定員8360人程度を目指すべき」と明記されるなど、最近の医師不足を背景に政府全体として医学部定員増に政策のかじを切ったことから、文科省としても、地域医療に貢献する大学の取り組みや教育体制の整備などを支援するため、重点的に予算を配分する必要があると判断した。
新規事業として、地域医療に貢献する医療人の養成と大学への支援に必要な経費114億7877万円を要求する。具体的には、大学の学部教育で地域医療の担い手となる医師を養成する取り組みを支援する。また、地域医療の中で大学病院が「最後の砦」となっている産科・小児科について、教育環境を整備する経費を盛り込んだほか、現場を離れている女性医師が産科・小児科に復帰できるような支援も行う。産科医の負担軽減の観点から、院内助産所などを活用した助産師養成環境を整備するための経費も補助する。
また、医学部の定員増に伴う教育環境整備を支援するため、新規に69億9995万円を求める。具体的には、少人数教育を実施する医学部教育に支障が出ないよう、教育環境の整備充実を図ることを柱とする。さらに近年高度化した医学・医療技術の向上に対応した医師養成に向けて、トレーニング教育機器や解剖実習台などを整備する費用も盛り込んだ。
一方、既存事業についても、大学病院の医師養成機能などをより強化するため、前年度から約36億円積み増した78億6000万円を要求する。
内訳をみると、若手医師にとって魅力あるキャリア形成システムを構築し、質の高い専門医や臨床研究者を養成する大学病院の取り組みを支援するために30億円、がん専門医などを養成するための取り組みの支援に25億円、女性医師の臨床現場定着・復帰支援などに3億6000万円をそれぞれ充てる。
文科省全体の概算要求は、一般会計で5兆9472億3300万円、エネルギー対策特別会計で1484億7600万円となった。(8/29MEDIFAXより)