医師の地域偏在解消「国の関与を」/社保審・医療部会
厚生労働省の社会保障審議会・医療部会(部会長=齋藤英彦・国立病院機構名古屋医療センター名誉院長)は10月27日、地域医療支援センターの医療法への位置付けについて議論し、委員から反対意見はなく方向性は大筋まとまった。「医療法への位置付けで各都道府県が責任を持って医師の地域偏在解消に取り組むための体制整備ができる」との厚労省の説明には「都道府県への丸投げはやめ、国が直接関与すべき」との指摘もあった。
●地域医療支援センター、医療法への位置付けは
厚労省は、各都道府県の医療対策協議会で取りまとめた医師確保の方針に沿った施策の実施主体として地域医療支援センターを「医療法に位置付けることをどう考えるか」と論点を提示。邉見公雄委員(全国自治体病院協議会長)が「この10年間、偏在は解決していない。国がマッチングのようなものを考えるべき」として、国の関与が重要だとした。
地域の医師偏在の解消に向けて中川俊男委員(日本医師会副会長)は「臨床研修をした県に残ることが非常に多い」と指摘。「臨床研修医数と全国の受け入れ募集定員数をほぼ一致させることで、偏在解消策につながるのではないか」とした。このほか委員からは「若者の専門医志向や専門医を集めないと高度医療を提供できない現状など、問題の背景を分析すべき」「若手の都市集中が要因にある。法的に、ある程度の強制力を持たせて、働く場を一定期間制限することを考えるべき」との意見が上がった。
地域医療支援センターは現在、全国15カ所で先行的に実施されている。厚労省は医療部会へ主な取り組み例(9府県)を紹介した。先行事例について中川委員は「ほとんど効果がなかったように見える。派遣する医師のいない支援センターが機能するのか」と指摘した。これに対し厚労省医政局指導課の井上誠一課長は「2011年度から始めたばかり。主要な対象である地域枠医師もこれから卒業してくる。最終的にさまざまな事業をパッケージで実施できるよう取り組んでいきたい」とした。
地域医療支援センターは、都道府県が主体となって医師の地域偏在を解消するためのコントロールタワーとして都道府県庁や大学病院、都道府県立病院に設置する。医師不足病院への医師確保支援のほか、地域枠医師や地域医療支援センターが確保した医師の地域医療に従事することへの不安解消、情報発信・コーディネートを行っていく。厚労省は12年度概算要求で10.9億円を計上。11年度からすでに先行実施している15カ所を計30カ所に拡大し、各県支援センター間のネットワークも構築していきたいとしている。(10/28MEDIFAXより)