医師のストレスチェック、職場に義務付け/改正安衛法
厚生労働省は、従業員が職場で年に1回医師によるストレスチェックを受けることを事業主に義務付ける制度を創設する。ストレスチェックの結果、精神の不調を抱えた人を産業医の面談に結び付け、さらに、医療機関の受診につなげて、うつ病の罹患や自殺を未然に防ぐのが狙いだ。労働安全衛生法(安衛法)の一部改正を予定しているが、今国会は子ども手当など重要法案がめじろ押しで、現時点では法案提出のめどは立っていない。
全国の自殺者は2010年に13年連続で3万人を超えた。この異常事態を受け、厚労省は10年省内に検討会を立ち上げ対策を検討。10年12月には、労使双方が委員を務める厚労省の「労働政策審議会」が、医師による従業員のストレスチェックを事業主に義務付ける制度の創設を細川律夫厚生労働相に提起した。これを受け厚労省は安衛法の法改正を行う方針を決めた。
厚労省労働基準局によると、新たな制度では、事業主が事業主健診の機会などを利用して年1回医師に従業員の精神状態を確認してもらう。異常がある場合は医師が従業員に産業医との面談を呼び掛ける。従業員は産業医の面談を受けるかどうか選択できる。
従業員が事業主に面談を希望した場合、事業主は産業医に依頼して面談の場を設けなければならない。費用は事業主が負担する。
さらに、事業主は面談をした産業医から意見を聞くことも法律で義務付ける。産業医は時間外労働の制限など業務の改善を事業主に助言し、事業主は労働環境の改善に役立てる。
個人情報保護の観点から、産業医は労働者の症状などは事業主には伝えない。安衛法とは別にガイドラインを設け、産業医が必要に応じて労働者に医療機関への受診を勧奨するよう定める。
10年の検討会では、事業主健診に精神の不調を医師が確認する項目を設けることが提案された。だが健診項目に含めると健診結果が事業主に通知されるため、労働基準局は「労働者のプライバシー保護を考え健診項目に入れず、事業主健診とは別にストレスチェックを事業主に義務付けた」と説明する。
新たな制度を設けた場合、産業医の受け皿が足りなくなることが想定される。このため産業医が自分の管理下にある保健師や国家資格のない「臨床心理技術者」などに、産業医業務の一部を分担させることもできるよう法改正する予定だ。(2/8MEDIFAXより)