医師が選んだ医事紛争事例(17)  PDF

医師が選んだ医事紛争事例(17)

明らかなミス!患者の体内にガーゼ残存

(40歳代後半女性)
〈事故の概要と経過〉
 腰痛と右下肢痛を主訴に、A医療機関を受診した後、B医療機関でCT検査を受けたところ、腹腔内に異物の陰影が認められた。そこでB医療機関は、C医療機関に問い合わせ、C医療機関が過去に施行した子宮筋腫で小切開を伴う腹腔鏡下手術の際のガーゼ残存と判明した。なお、患者は過去に手術をC医療機関以外で受けていなかった。
 患者側は必要以上に抗議をすることはなかったが、D医療機関においてガーゼ摘出術を開腹により施行した。その後は1回の通院で事実上の症状固定となった。
 C医療機関側としては、腹腔鏡下手術が終了した際、ガーゼカウントは1回行い、更にレントゲンを撮っていたが、ガーゼカウントミス、更にフィルムにガーゼが写っていたにもかかわらず見落としがあったとして、二重の不注意があり全面的に医療過誤を認めた。なお、D医療機関での医療費は保険者の指摘により自費扱いとなり、医療機関側が負担するとともに、慰謝料の前払いとして数十万円を患者側に渡した。
 紛争発生から解決まで約1カ月間要した。
〈問題点〉
 C医療機関側の主張通り、ガーゼ残存の原因は二重の不注意によるものであり、完全な過誤と判断される。C医療機関側は、医療費を含め、十分な調査をする前から、百万円近くの金銭を患者側に渡していたが、今回の事故は明らかな過誤であるので、やむを得なかっただろう。また、医療保険適用に関して、明らかな医療過誤の場合、あるいは過誤を疑われるだけでも、第三者障害として保険者からチェックが入ることも実際にあるので要注意である。
〈解決方法〉
 医療機関側は過誤を認め、既払いの慰謝料とは別に、改めて賠償金を支払い示談した。

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