医師が選んだ医事紛争事例(16)
虫垂炎で保存的治療から手術となって患者が憤慨
(30歳代前半女性)
〈事故の概要と経過〉
骨盤腹膜炎、急性虫垂炎、付属器(卵管)炎の診断で初診、入院。抗生物質に効果がみられたことと患者自身が手術を希望しなかったことから保存的治療とした。経過は良好であったが、2週間後に臨床症状が増悪したので急性虫垂炎、腹腔内膿瘍に対して虫垂炎切除術およびドレナージを施行した。術後は経過良好であったが、数日後に熱発。検査の結果、腹腔内膿瘍が再燃したことを確認した。そこでA医療機関へ転院となり、そこでドレナージ術を再施行され経過良好で退院となった。
患者側は虫垂炎の確定診断が遅れたことにより結果的にA医療機関でドレナージの再手術を受けることになったとして慰謝料等を請求するとともに調停を申し立てた。
医療機関側としては、本人には説明も十分にしており、希望も取り入れて保存的療法としたことについて医学的に問題はないと主張した。ただし、患者の夫と母親は説明したことの経過等を十分に知らなかったらしく、患者が再手術になったことについて憤慨した。
紛争発生から解決まで約5年9カ月間要した。
〈問題点〉
カルテから、診断、手術手技、説明、カルテ記載について問題はないと判断された。結果的に再度ドレナージ手術を施行されたことは、腹腔内膿瘍再燃が予測できなかったことからやむを得ない。
〈顛末〉
調停は不調となったが、その後、患者側がアクションを起こさなかったので立ち消え解決とみなされた。