勤務医の処遇改善へ「配分見直し」/行政刷新ワーキングが決定
政府の行政刷新会議(議長=鳩山由紀夫首相)が行う、2010年度予算概算要求のうち無駄な事業を見つける「事業仕分け」が行われた。対象となるのは、約210事業の計447項目。厚生労働省分は「診療報酬の配分」や「介護予防事業」など50項目が挙がった。11月11日から27日の9日間にわたり、3つのワーキンググループで、政治家と民間有識者からなる「仕分け人」が、各省の事業について無駄かどうかを判別した。医療関係では、診療報酬の配分(勤務医対策など)やレセプトオンライン導入のための機器整備の補助、医師確保・救急・周産期対策の補助金など(一部モデル事業)が対象に挙げられた。
それに先立つ刷新会議の場で、鳩山首相は「いよいよ新しい政権のある意味で一番重要な部分が動き出した」と述べ、ワーキンググループの仕分け作業に期待感を示した。
11月11日は、診療報酬について議論を行い、勤務医の処遇改善のため、診療報酬の配分を見直す方針を決めた。今後の行政刷新会議で正式決定し、10年度診療報酬改定に向けて、「仕分け人」による“改定の基本方針”は、厚労省政務三役や中医協での改定議論に反映されることになる。
この日の議論では、ワーキングチームは診療報酬の配分の見直しを行うことで一致、特に「収入が高い診療科の(診療報酬の)見直し」と「開業医・勤務医の平準化」にはほとんどの仕分け人が賛成した。
冒頭、財務省主計局は、物価が下落している中で、医師不足対策として医師の給与を一律に上げるのは国民の理解が得られないと主張。保険料などの国民負担を増やさず、収入が高い診療科の診療報酬を見直すことや、診療所の診療報酬を全般的に見直すことを提案した。
仕分け人の土居丈朗慶応大教授は「ここ10年間で皮膚科、整形外科の医師数が伸びている。診療報酬が両科に比較的手厚く配分されたことも原因ではないか」と述べ、診療科間での診療報酬の配分を見直すべきだと指摘した。
仕分け人のクレディ・スイス証券の市川眞一ストラテジストも「(勤務医と比べ)開業医の人の方が年収も高いし、勤務時間も短く、これはおかしい。価格の値付けの失敗ではないか」と述べ、勤務医に診療報酬を手厚く配分することを求めた。
取りまとめ人の枝野元政調会長は「勤務医と開業医の収入、診療科ごとの収入が公平なのか、客観的なデータに基づいて調べる責任は厚労省にある」と述べ、ワーキングチームが指摘した課題を診療報酬改定の議論に役立ててほしいとした。
このほか、レセプト審査に関して国保連と支払基金の「統合」や、入院費の食費・居住費の見直しについても決まった。仕分け人からは「国保連と支払基金は競争する制度になっていないため効率化できない。統合を検討すべき」「入院費の食費・居住費は自己負担の検討が必要」などの意見が出た。(11/11−12MEDIFAXより)