募集定員枠「前年度のマッチ数は確保」/臨床研修新制度で経過措置
厚生労働省は4月23日、医道審議会・医師分科会医師臨床研修部会を開き、17日までに募集したパブリックコメントを踏まえた新医師臨床研修制度の見直し案を議論した。
厚労省は臨床研修病院の募集定員枠の削減率が大きい場合の経過措置を提示。2010年度の研修医募集で都道府県別の定員上限枠を超えた場合、各病院の募集定員が極端に減少することがないよう、09年度の病院のマッチング数を最低限確保できるよう考慮する。
厚労省医政局医事課の杉野剛課長は終了後、記者団に対し「経過措置によって、大都市部でも前年度並みの定員数は確保できる。都道府県の定員上限枠を超えることにはなるが、地域の実情などを踏まえると考慮する必要がある」と述べた。厚労省は今月中に関係省令や通知の改正を行う予定だ。
見直し案では、研修医の募集定員が20人以上の臨床研修病院に対し、将来小児科医と産科医を希望する研修医を対象に、各科2人以上の募集定員を必ず設けることを求めた。これに対し、「小児科と産科を定員総枠の1割とするのは大きい。別枠にすべきだ」(小川秀興委員・学校法人順天堂理事長)など多数の反対意見が上がった。杉野医事課長は終了後「今月下旬の関係省令・通知改正までに、小児科と産科の募集定員枠の取り扱いについて再検討する」との方針を示した。
このほかの修正点については大筋了承された。臨床研修病院群の中核となる大学病院などを「基幹型臨床研修病院」とし、協力型臨床研修病院などと連携して研修を行うとした。基幹型臨床研修病院の指定基準に適合せず、指定取り消しの対象となる医療機関には一定の経過措置を設ける。基準を満たさないものの研修医の応募数が多いケースなどが想定され、各病院の事情に合わせて個別に対応する方針だ。
病院での募集定員枠は過去3年間の受け入れ実績の最大数とする。募集定員の加算要件となる派遣医師は「7年以上15年以下」の臨床経験を有することなどとした。募集定員に加算する数値は10人を上限とする。
パブコメは、医政局医師臨床研修推進室によると100件以上の意見が集まったという。田原克志室長は同日、メディファクスの取材に応じ、賛否両論が集まっているとした上で「検討会で議論していた段階からも賛否両論があり、それら両方を踏まえて見直し案を作成した。今の骨格は変え難い」と指摘した。都道府県ごとに設定された定員上限枠についても「撤廃することは難しい」とし、各病院の募集定員の設定に当たって激変緩和措置を講じる考えを示した。
都道府県ごとの募集定員上限をめぐっては、地方の自治体や医師会などから反発の声が上がっている。厚労省案で全国で最大の定員削減率(30.8%)となった京都府は、地域医療や医学教育の現場に大きな混乱をもたらすとして、上限枠を撤回した上で再検討するよう求めた要望書を、舛添要一厚生労働相に提出した。要望書は京都府知事、京都市長ら27市町村長の連名。今回の見直し案は、府内の医師不足を一層深刻化させ、医療提供体制の崩壊につながる恐れがあると強い危機意識を表明している。
さらに、京都府立医科大と京都大医学部は県域を越えて医師を派遣していることから、地域ブロック単位での上限設定についても検討するよう求めている。また、京都府は府立医大に年間100億円を超える一般財源を運営費として投入しており、「今回の見直しは、そうした地方自治体の努力を無にするもの」と問題視している。
一方、研修医を大学医局に入局させず、地域の中核病院で臨床研修を受けさせる「名古屋方式」を実施してきた愛知県では、愛知県医師会長や病院協会長など10団体代表者の連名で、舛添厚労相に見直し案に対する緊急要望書を提出した。今回の見直し案の実施によって、病院の救急医療体制が崩壊する危険性が高く、容認できないとしている。(4/20・24MEDIFAXより)