労基法違反など病院・診療所で1216件/09年度、労働基準局
全国の労働基準監督署が2009年4月から10年3月までの1年間に労働基準法違反などで是正勧告を行った病院・診療所など医療保健業の事業場数は1216件に上ったことが、厚生労働省労働基準局監督課への取材で分かった。労基署が定期監督を実施した医療保健業の事業場数1475件に占める割合は82.4%で、全業種平均の65.0%に比べて高く、業種別では映画・演劇業の84.4%に続いた。監督課の達谷窟庸野課長は「(医療保健業の違反事業場率は)全業種と比べても平均で高い」との認識を示した。
労基署は、労働者からの申告に基づく監督のほかに、各労基署に寄せられた情報や投書に基づいて定期監督を行っている。監督課がまとめた医療保健業に関する定期監督の実施状況・法違反状況によると、労基法違反では労働時間(32条・40条)が781件で最も多く、次いで時間外労働などに対する割増賃金(37条)が540件、就業規則(89条)が390件、36協定の締結を含む労働条件の明示(15条)が295件、賃金不払い(23条・24条)が72件あった。
前年度の08年度に定期勧告を実施した医療保健の事業場1386件のうち、労基法などの違反について是正勧告を受けた事業場は1142件で、09年度と同率の82.4%だった。労基法等の対象となる医療保健事業所は06年現在で約18万カ所。
●賃金不払い是正支払額5億4000万円の病院も
一方、監督課は10月、09年度の賃金不払い残業(サービス残業)の是正指導状況について結果をまとめた。残業に対する割増賃金が不払いになっているとして09年度中に労基署から是正指導を受け、100万円以上の割増賃金を支払った企業は全国で1221件あった。うち病院・診療所などの医療保健業と社会福祉施設などの保健衛生業からなる「保健衛生業全体」は103企業で、対象労働者1万2003人に不払い分の14億682万円が支払われた。是正指導を受けて1000万円以上の割増賃金を支払った保健衛生業者は17企業あった。
割増賃金の金額は、勧告前の2年分をさかのぼって算出する。1企業の最高支払額は12億4206万円を支払った飲食店だったが、5億3913万円を支払った病院が第3位に入った。達谷窟課長は「これは医師だけでなく、看護師や薬剤師、事務職などの割増賃金を含む病院全体の支払額」と説明した。
勤務医の賃金不払い残業について達谷窟課長は「宿直と言っても、実際に働いていれば労働時間となり、時間外労働も発生する。自宅待機については、個別に調べる必要があるが、指揮命令下になければ労働時間には含まれない」との認識を示した。(11/8MEDIFAXより)