刑法から見た医療事故調 医療安全学習会開く  PDF

刑法から見た医療事故調 医療安全学習会開く

 今年10月から、病院や診療所等で診療行為に関連した予期しない死亡事例が発生した際、院内に事故調査委員会を設置すると同時に、第三者機関「医療事故調査・支援センター」に報告を義務付ける医療事故調査制度が始まる。
 協会は4月9日、立命館大学法科大学院の松宮孝明教授(刑法専攻)を招き「刑法から見た医療事故調査制度—医師法21条、黙秘権、事故報告書と伝聞証拠禁止の原則など」のテーマで医療安全対策部会学習会を開催した。

「異状死」どう考える?

 松宮氏はこの新しい医療事故調査制度が円滑に機能するかどうかは、院内事故調査および医療事故調査・支援センターによる調査の質と信頼性に依存していると概括した。その上で、医師法21条に関しては「医療関連死以外の異状死の存在を考慮するなら、これを廃止することは適当でない。課題は、『異状死』の定義の明確化・コンセンサスの獲得である。また、検死制度ないし技術の一般的向上を図ることも大切だろう。医療がパブリックな制度である以上、患者遺族との間の合意があれば届け出なくてよいとは、単純にはいえない」とした。

黙秘権との関連は?

 黙秘権は憲法38条1項で「何人も、自己に不利益な供述を強要されない」とある。この規定による保障は、「純然たる刑事手続においてばかりではなく、それ以外でも、実質上、刑事責任追及のための資料の取得収集に直接結びつく作用を一般的に有する手続には、ひとしく及ぶものと解するのを相当とする」(最判昭和47・11・22刑集26巻9号554頁)。行政処分でも、懲罰的なものであれば「黙秘権」が行使できると解する余地はある。しかし、純然たる事故防止対策のため、あるいは民事責任追及には行使できない。民事も含めた責任追及に利用されないことについてまで、憲法による保障があるわけでも、一般的な合意があるわけでもないと解説し、医師賠償責任保険制度やADRの充実が必要と述べた。

パブコメ活用し詳細を明らかに

 医療法施行規則の一部を改正する省令案に関するパブリックコメントでは、制度の骨格が示されているのみで、詳細不明であることから、「予期せぬ」の言葉の定義、遺族の定義、センター調査費用の問題、個人診療所ではいかに匿名化しようとも報告書で医師が特定されることの問題、各都道府県の支援団体への補助金問題など疑義項目については積極的にパブリックコメントを活用し明らかにしていくべきと締めくくられた。

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