共通番号制が成立
社会保障費抑制、情報漏洩…拭えぬ懸念
共通番号制度関連法が5月24日、参院本会議で自民、公明、民主、日本維新の会、みんなの党などの賛成多数で可決、成立した。国民一人ひとりに12桁の番号を割り振り、社会保障や税を管理する。2015年10月をめどに個人番号を通知、16年1月以降に顔写真付きのICカードを希望者に交付する。
同法は民主党政権が12年2月に国会に提出、同年末の衆院解散で廃案となったが、自民、公明、民主3党による修正を経て3月に提出されていた。民主党政権の法案は消費税増税時の「給付付き税額控除」をするために必要としていたが、自民党政権の法案ではこうした低所得者対策の理念が立ち消え、行政運営の効率化と公正な給付と負担の確保、国民の利便性の向上が法の目的で強調されている。さらに法施行3年後の見直しで民間への利用拡大も視野にいれている。
医療分野での利用範囲は、現段階では保険料の納付や給付に関するもので、患者の病歴や診療内容など機微性の高い情報の活用は今後の検討となる。民間への利用を広げればさらに漏洩の危険性も被害の大きさもさらに高まる。
法案には、個人情報保護のため行政機関などを監視する第三者機関の設置や情報漏洩に対する罰則を盛り込んでいるが、情報漏洩という事態に対して、責任の所在が明確ではない。すでに番号制等を導入している諸外国での番号盗用や不正使用など深刻な例が報告されており、こうした被害を防ぐ手立てがたっていないことは明らかである。このような懸念を抱えたままでの「見切り発車」を許すべきではないだろう。
また、制度の導入時には2700億円を見込むが、政府は費用対効果の試算すら実施していない。官・民が膨大なコストをかけての超大型公共事業となるが、喧伝されている利便性の向上などと見合うものとなるのかも問われる。
そもそもの問題は、制度導入の真の狙いが社会保障費削減にあることである。小泉構造改革の社会保障費削減方針の中で、負担と給付を連動させ負担の範囲内に給付を抑える構想として番号制度の活用が出されており、この制度もその延長線上にあるといえる。またデータベースの利活用で国による管理医療が進み、医療費の総額規制につながることも懸念され、このような活用がされないよう監視していかねばならない。